アルコール依存症の新しい治療法となる可能性
Possible New Treatment for Alcohol Dependence
2008 April 08
アルコール依存症の患者は、ストレスに関連した神経伝達物質の濃度が上昇している。こうした神経伝達物質のひとつのsubstance Pがあり、これはneurokinin 1受容体(neurokinin 1 receptor:NK1R)と呼ばれる受容体と結合することで、生理学的作用を発揮する。
多国籍のチームは、NK1R遺伝子をノックアウトしたマウスを作成した。正常なNK1R遺伝子を有するマウスと比べて、ノックアウトマウスは自発的な飲酒が大幅に減少し、アルコールによる鎮静も容易であった。
その後、このチームは、アルコール依存症の治療中で不安のレベルが高い入院患者50人を対象としたランダム化比較試験を実施した。一方の群にはNK1Rと結合し不活性化する薬物(LY686017)を投与し、他方の群にはプラセボを投与した。患者は入院のまま最大1週間注意深く観察した。アルコール飲料の写真を提示したところ、実薬群はプラセボ群に比べて、アルコールへの自発的渇望が大幅に抑制され、渇望が鈍麻した。妥当性の確認されたストレス誘発試験を実施するか、アルコール飲料の写真を提示したところ、実薬群では、コルチゾール反応が低下し、ストレスに関与する脳領域における代謝活性が減少した(機能的磁気共鳴画像スキャン)。有害作用は報告されなかった。
コメント:げっ歯類、次いでヒトで実施されたこれらの研究は、NK1Rを阻害する薬物はアルコール依存症の患者の治療に有用である可能性を示している。次の段階は、これらの化合物がより長期間忍容可能かどうか、アルコール飲料への渇望と飲酒量を低下させるかどうか明らかにすることである。
— Anthony L. Komaroff, MD
Published in Journal Watch General Medicine April 8, 2008
George DT et al. Neurokinin 1 receptor antagonism as a possible therapy for alcoholism. Science 2008 Mar 14; 319:1536.