現実との多彩なふれあいを

患者の回復
~現実との多彩なふれあいを

かつて診ていた統合失調症患者の話である。母親と二人だけの密着した生活を送っていた彼女は、完全寛解と思われた約10年間の後、母親の死をきっかけに急性の幻覚妄想状態に陥り、その後は一進一退を繰り返し、容易には回復しなかった。彼女は妄想上のフィアンセが自分を迎えに来ると信じ、来るはずのないその彼のために毎晩夕食を作り続けたのである。

遅ればせながら私は、現実との多彩なふれあいが病気からの真の回復を促すことを感じ、患者・家族の方には、表2のようなポイントを示して、一つでも多くこれを満たすと、病気に対する「免疫力がつく」などと話すようになった。

表2 回復に向かう人のイメージ
 病名を知っている。
 自分なりの人生設計を持っている。
 家の中で役割を持っている。
 病院以外に定期的に通うところがある。
 話せる友だちが2人以上いる。
 親や兄弟姉妹と仲が良い。
 主治医等に信頼感を持っている。
 自分の貯金を持っている。
 自分のことを悪く言わない。

(白石先生)