第2世代抗精神病薬が第1世代より優れるとはいえないとの記事

優れた薬とは何かが問題。以下の記事について。
有効、運動系副作用、治療中止率、症状改善効果、うつ、QOL、服薬遵守率などの言葉が見られ、
精神病理(PANSS)、重症度(CGI)、心理社会的機能(GAF)、うつ状態(CDSS)、QOL(MANSA)、錐体外路症状(SHRS)、性機能不全(UKU)
などをスケールとして用いている。

自我障害の改善が病理の本質の改善に近いと考えられるが、
そのことが患者さんに幸せをもたらすのかといえば、必ずしもそうではなく、
QOL(生活の質)が大切だとの意見もあり、しかし、それはほとんど同義反復で、
人間にとって一番大切なものを生活の質というのであるから、
生活の質が一番大切だとはいえるのだが、
さて実際に生活の質をどのような項目でどのようにで見ているのかといえば、
心もとない。

患者さんが治療を中止してしまう率を比較すればどうかとの意見はあり、
治療を継続するなら、患者さんにとっていい薬であるはずであるというのである。
一理あるが、それならタバコやビールはとても「優れて」いることになる。

ここでは紹介されていないが、客観症状、主観症状といった考え方もある。
また、客観症状でも、専門医による評価と非専門医による評価などというものもある。

「質」を数値に置き換えて、どちらが優れているか「比較」しようとする
志がそもそも、「優れて」いないように思われる。

このような研究が出ると、
では、日本人ではどうか、インドではどうか、人種間の差はどうかといった、
「ジェネリック」な研究も出てくるので、
いとをかし。

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第2世代抗精神病薬が第1世代より優れるとはいえない
 
統合失調症の初期症状に対する抗精神病薬治療は少なくとも1年間は有効であるが、第2世代の薬剤が第1世代よりも優れるとはいえないことが、EUFEST(European First-Episode Schizophrenia Trial)試験の結果から明らかとなった。第2世代抗精神病薬が上市されて10年以上が経過した。当初から、第1世代より有効で運動系の副作用も少ないとされるが、反対意見も多かった。オランダUtrecht医科大学Rudolf Magnus神経科学研究所のRene S Kahn氏が、Lancet誌2008年3月29日号で報告した。

5つの薬剤を評価する非盲検の無作為化試験

EUFESTの研究グループは、第1世代抗精神病薬ハロペリドールを対照として、4つの第2世代抗精神病薬amisulpride、オランザピン(国内商品名:ジプレキサ)、クエチアピン(セロクエル)、ziprasidone)の有用性を評価する無作為化対照比較試験を行った。

対象は、18~40歳の統合失調症、統合失調症様障害、統合失調性感情障害の診断規準を満たす症例とした。2002年12月~2006年1月の間に、ウェブサイト経由のオンラインシステムを用いて14ヵ国50施設から498例が登録され、ハロペリドール(1~4mg/日)群に103例、amisulpride(200~800mg/日)群に104例、オランザピン(5~20mg/日)群に105例、クエチアピン(200~750mg/日)群に104例、ziprasidone(40~160mg/日)群に82例が無作為に割り付けられた。

精神病理(PANSS)、重症度(CGI)、心理社会的機能(GAF)、うつ状態(CDSS)、QOL(MANSA)、錐体外路症状(SHRS)、性機能不全(UKU)などの評価を行った。フォローアップ期間は1年。主要評価項目は全原因による治療中止とし、割り付け時は患者も治療医も非盲検とした。

治療中止率は優れるが、症状改善効果は同等

Kaplan-Meier法で推計した1年間に治療中止となった症例の割合は、ハロペリドール群よりも第2世代の薬剤群で実質的に低かった[ハロペリドール群72%(63例)、amisulpride群40%(32例)、オランザピン群33%(30例)、クエチアピン群53%(51例)、ziprasidone群45%(31例)]。

ハロペリドールとの比較における全原因治療中止のリスク低下のハザード比は、amisulpride群0.37(95%信頼区間:0.24~0.57)、オランザピン群0.28(0.18~0.43)、クエチアピン群0.52(0.35~0.76)、ziprasidone群0.51(0.32~0.81)であり、第2世代の薬剤が有意に優れていた。

PANSSで評価した症状の改善効果および入院率は治療群間で差を認めなかった。CGI、GAFによる評価はamisulprideが優れており、クエチアピンおよびハロペリドールが最も低かった。うつ、QOL、服薬遵守率にも治療群間で差は見られなかった。

Kahn氏は、「統合失調の初期症状に対する抗精神病薬治療は1年間は臨床的に有効なことが示唆された。第2世代抗精神病薬は治療中止率が優れていたが、症状の改善効果は必ずしも優れなかったことから、ハロペリドールよりも有効とはいえない」と結論している。