津田均「気分変調症」

精神科治療学2005年10月vol20 p.144-145
勉強になったので、メモしておく。

1.
DSMとICDで定義している気分変調症は、様々な病態が混合した診断カテゴリーである。
細分化した診断が必要。

2.感情病圏に属する気分変調章

 2-1 診断のてがかり 
感情病圏の抑うつの質的特徴に着目。思考、行動の推進力が生命的水準で弱まっている、外界の活気に同調することができず、逆にそれを負担に感じる。

 2-2 生命リズムの障害という、内因性の標識
季節変動、日内変動、抑うつが悪化したときの抵抗し難い多眠。

 2-3 非定型の特徴(Akiskal 2001)
若年発症、多眠、潜在的に双極性であり、その不全型。気分変調症が大うつ病エピソードをともなうとき、ダブルデプレッション。

 2-4 薬物治療
SSRI、三環系、スルピリド。ただし潜在していた双極性障害を顕在化させる危険がある。薬剤コンプライアンスは不良のこともある。
 
 2-5 精神療法
否定的認知傾向には認知療法。
他人の期待や社会規範に沿う代わりに自律性を放棄して依存するとき、対人関係療法。
若年患者には社会的役割が得られるよう援助する。

3.非感情病圏

 3-1 身体疾患にともなう二次的抑うつ
慢性疲労症候群は、患者の表出に特徴があり、鑑別を試みる。

 3-2 反応性抑うつ
心理的外傷。
素質と環境要因。
統合失調質の人の反応性抑うつが遷延することは多い。
不安神経症、対人恐怖、心気症がある場合、原疾患の治療。

4 パーソナリティ障害圏

 4-1 さまざまな類型
境界型人格障害
「ひきこもり」
受身-攻撃的態度

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「思考、行動の推進力が生命的水準で弱まっている」というあたりは、Vitale という議論。
外界の活気に同調することができず、逆にそれを負担に感じるというあたりはRemanenzの話。

ここまで分解されると、つまり、気分変調症解体論ですね。ひとまとめにしておく理由があまりないみたいです。

Akiskal先生の年来の主張を骨格にして、双極性部分に肉付けしているのですが、賛成です。