自殺企図患者への精神科救急対応

自殺企図患者への精神科救急対応

精神科救急で頻度が高い受診者は、自殺企図や企図を未然に防がれた場合、ないし深刻な自殺念慮などである。また一般救急や救命救急から精神科コンサルテーションを要請される場合においても、もっとも多いのは自殺未遂である。中でも初期救急や二次救急で、ことに目立つのは過量服薬と手首自傷(リストカット)である。

自殺未遂が疑われたら、まず本人ないし家族に事実関係を単刀直入に確かめる。「いたずらに刺激してしまうのでは」といった心配は無用である。

受傷機転に関しては得られた情報を鵜呑みにせず、一つの手段に目を奪われないようにすること。例えば手首自傷の前に鎮痛剤を大量服用していたなど、複合的な手段を見逃さぬようにすることが身体治療上重要である。

以下は自殺未遂者の特徴と対応上のポイントである。

1.自殺未遂者の特徴
A.生命的危険性の乏しい軽症自殺未遂者
  • 20代若年女性層が突出して多い。
  • 手段は、少~中等量の過量服薬、浅い手首自傷が大多数。
  • 神経症、軽症うつ病、パーソナリティ障害、通院中の精神障害者に見られる
    (非精神病群>精神病群)。
B.生命的危険性を伴った重症自殺未遂者
  • 男性、中高年層に多い。
  • 手段は、飛び降り、電車飛び込み、大量服薬、服毒、刃物、縊首、焼身、家庭用ガスないし排気ガスなど。
  • 精神病圏、重症うつ病、アルコール症の割合が60%以上
    (精神病群>非精神病群)。
2.自殺未遂者への対応
A.良好例-簡単な精神的援助で帰宅させることも可能。
  • 言葉や表情が和らいで、自然な感情交流ができる。
  • 診察や処置に協力的。
  • 「もうしない」「助かって良かった」などの肯定的表現をしている。
  • 家族は患者の行動を共感的にとらえている。
B.不良例-救急入院を含め向精神薬投与
  • 言葉や表情に緊張が強く、自然な感情交流が見られない。おし黙っている、興奮が強い、不自然に冷静で他人事のよう、など。
    あるいは幻覚妄想状態、強いうつ状態を認める場合。
  • 診察や処置に拒否的、ないし言葉や行動がまとまらない。
  • 助かったことへの肯定的表現が出てこない。
  • 家族は患者に対して拒否的、批判的態度が強い。