種々の新型うつ病

我々の考えとしては、
http://shinbashi-ssn.blog.so-net.ne.jp/2008-05-11-1
であるが、
その理論を元にして、以下のものを区別して提示できればいいはず。

うつ病やうつ状態を問題にするとき、ジャーナリスティックなものは除外するとして、
以下のような各種のものがある。
どれも日本ローカルなもので、
先進国に共通というものでさえない。
東南アジア文化圏に特有でもない。
積極的に文化依存症候群として項目をたてる方法もあるが、
特にインターナショナルな診療をしている人以外には、
何が特有で何が特有でないか、判然としないはずだ。
そして何かいうためにはエビデンスが必要である。
エビデンスなしで、まあまあ許容されているのがこの分野の特徴でもある。
多くは現代うつ病の病理の特徴を語ることで、
現代日本社会の特徴を語るという方法である。

たとえば会社という組織の変貌を語る。
かつて土居が甘えの構造で、日本語の構造を、その他の言語と比較して、
その延長で、日本人の病理として抽出したのは、
地域的な差異・文化的な差異であるが、
以下の諸家は日本国内での時間的な変化をおもに問題にしているようだ。
だから価値があるという側面もあり、
ならば、何がその価値なのかということになる。
そしてその分を引き算すれば、
時代によらないうつの主成分が分かるはずである。

我々の考えでは、
時代によらないうつの主成分は、
神経細胞の持続的反応に対する反応特性に着目したMAD理論で説明でき、
笠原のいう対他配慮、協調性の軸については、
MADと別立てで、時代と地域に規定され反応している成分であると考えている。
そしてこの変化がかなり劇的であり、諸家の注目を惹き、
論文が量産されていると思われる。

0.メランコリー親和型、執着気質、循環気質のうつ病
1.ディスチミア親和型うつ病
2.未熟型うつ病
3.現代型うつ病
4.職場結合性うつ病、Beard 型うつ病
5.逃避型抑うつ
6.退却神経症
7.双極スペクトラム論
8.非定型うつ病
9.反応性抑うつ
10.心因反応
11.適応障害
12.PTSD

1.ディスチミア親和型 樽味
ディスチミア親和型
青年層
studentapathy(Walters)
退却傾向(笠原)と無気力
自己自身(役割ぬき)への愛着
規範に対して「ストレス」であると抵抗する
秩序への否定的感情と漠然とした万能感
もともと仕事熱心ではない
不全感と倦怠
回避と他罰的感情(他者への非難)
衝動的な自傷,一方で“軽やかな”自殺企図
初期から「うつ病」の診断に協力的
その後も「うつ症状」の存在確認に終始しがちとなり「うつの文脈」からの離脱が困難,慢性化
薬剤は多くは部分的効果にとどまる(病み終えない)
どこまでが「生き方」でどこからが「症状経過」か不分明
「(単なる)私」から「うつの私」で固着し,新たな文脈が形成されにくい
休養と服薬のみではしばしば慢性化する
置かれた場・環境の変化で急速に改善することがある
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2.未熟型うつ病 阿部
未熟型うつ病:基本的には協調性を保つ循環気質者 ,依存的,わがまま,自己中心的,顕示的,自分の望みが かなわない状況下で不満とともに不適応を繰り返し,内因性のうつ病の病像で発症する。病 相を反復すると,不安・焦燥,パニック発作,身体的愁訴が病像に加わり,強い自殺衝動が 出現することがある。他責的で,自己愛的傾向が認められる。病前性格にマニー型ほどの精 力性はないが,いわゆる双極スペクトラムに属する。
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3.現代型うつ病 松浪
抑うつ気分よりも制止症状が前景に立ち,恐怖症的心性に関係する

現代型うつ病の特徴
①比較的若年者
②組織への一体化を拒絶しているために,罪責感の表明が少ない。むしろ当惑ないし困惑
③早期に受診→不全型発病
④症状が出そろわない;cf)SSD身体症状と制止が主景,選択的制止
⑤自己中心的(に見える);対他配慮性が少ない
⑥趣味を持つ;cf)逃避型
⑦職場恐怖症的心理+当惑感
⑧インクルデンツを回避;几帳面,律儀ではない
⑨レマネンツ恐怖;締め切りに弱い

「従来型うつ病」と異なる「現代型うつ病」の特徴は,
①やや若い年齢層(30歳すぎから)に見られること,
②患者は自分の言動や状態を異常だと感じており,ほとんどすべての症例で患者が自ら進んで受診すること,
③症状が「不全型」であること(うつ病の症状が出そろっていないこと),
④自責的ではなくむしろ当惑感を抱いていること,
⑤職場への忠誠心や同僚への連帯感を表明せず,職場への帰属意識が希薄なこと,
などである。
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4.職場結合性うつ病、Beard 型うつ病 加藤
職場結合性うつ病:不眠・心身疲労,頭痛・肩こりなど の身体不調,いらいら,不安・焦燥などの症状で発症する。この型のうつ状態も実際は「内因性うつ病 」であるとしている。

Tellenbach 型うつ病からBeard 型うつ病へ。職場が「メランコリー親和型化」している。
「几帳面で義理堅い」従来型のうつ病から、「自己中心的でわがまま」な現代型うつ病へと、職場のメンタルヘルスの話題が移っている。
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5.逃避型抑うつ 広瀬
逃避型抑うつ: 20 歳代後半から40 歳代の,いわゆるエリートサラリーマンが,多くは職 場の配置転換などの発病状況の下に,制止症状主体の抑うつ状態を呈するもの。他責。希死念慮の訴えはない。入院すると制止症状が比較的短期間に軽 減し,他患との交流も円滑かつ活発となる。しかし復職が問題になると出社恐怖の状態が出 現する。抑制主体の病像。「ヒステリー性要素の混入」。

6.退却神経症
笠原。
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7.双極スペクトラム論
双極スペクトラム論:Akiskal

8.非定型うつ病
1950年代に,英国の医師WestとDallyはモノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)に反応するうつ病の特徴について報告し,非定型うつ病という名称を初めて用いた.MAOI反応群は非反応群に比較して自責の念,早朝覚醒,午前中の抑うつ気分の悪化を訴えることが少なく,電気治療に対する反応性が悪かった.また,MAOI反応群では極度の疲労感,恐怖症や転換ヒステリーの既往,周囲の出来事に対する過剰な反応などの特徴が観察された.その後,Sargant,HordernもMAOIに反応するうつ病の患者群についてほぼ同様の臨床特徴を認め報告した.KleinとDevis,LiebowitzとKleinは自己顕示性人格,非抑うつ時の活動とエネルギー水準の亢進,拒絶時の抑うつ状態へのなり易さ,過食,過眠,極端な疲労感,抑うつ時の気分の反応性で特徴付けられるうつ病の亜型についてhysteroid dysphoricsと命名しMAOIに特異的に反応すると報告した.その後,Columbia大学の研究グループによって非定型うつ病の操作的診断基準が提案された.彼らは診断基準に沿って診断された非定型うつ病の患者群について,MAOI(phenelzine),imipramine,プラセポの3群間の治療反応性を比較した.その結果,非定型うつ病の患者ではimipramineに比較してphenelzineによる治療を受けた方が有意に改善することがわかった.

9.反応性抑うつ
10.心因反応
11.適応障害