虫歯方式と骨折方式 自然治癒力

治療を二つに分けます。

(1)虫歯方式
虫歯になったところを削ってとってしまいます。
肺炎なら、細菌を殺します。
癌なら、手術で取り除きます。

(2)骨折方式
骨折したところをギブスで保護して、あとは自然治癒を待ちます。
風邪ひきのとき、抗生剤を使いません。免疫力を補助します。

心療内科・メンタルでの治療は、
当院としては、(2)の方式で、自然治癒力を引き出す方式です。
自然治癒力を妨げているものがあったら、それを取り除く。
自然治癒力が弱いようなら、それを補助する。
漢方薬とかビタミン剤とかはそんな感じだと納得していただけると思います。

また、睡眠導入剤も、薬で無理に眠らせるというものではありません。
多くは睡眠のきっかけを作るだけです。

抗うつ剤は、いろいろな働きがあるのですが、
結局、ゆっくり休んでいただいて、自然治癒力を引き出す、
そのような働きを主眼としてもいるのです。
セロトニンが増えればすべて解決するのなら、
話はもっと簡単なはずなのです。

虫歯のように原因を取り除けるなら、一番根本的で即効的な治療ですが、
精神的な事柄に関して、そのようなことができるはずもありません。

骨折したときに、「がんばって骨を早くくっつけよう」と思ったとして、
どうすればいいですか?
結局、骨がずれたりしないようにして、時間を待つしかありません。
そして、それで充分にいい治療なのです。

待つ時間はつらいものです。
ついつい、余計なことをしてしまいます。
そこを、ちょっとだけがまんして、待ってください。
骨折したとき、骨がくっつくのを待っているのだ、そうイメージして、待ってください。

そのうち治療が進歩すれば、
骨をくっつける瞬間接着剤ができるかもしれません。
うつになった脳神経細胞を瞬間的に治してしまう方法がみつかるかもしれません。

でも、それまでは、少なくとも、治療の妨げになることはしないで、
ゆっくり待つことです。
体の中で、一所懸命、治療が進んでいるのですから。
自然治癒力を引き出す、邪魔しない。そんな方針です。