乳児の先天性心疾患と妊娠中の母体の尿路感染症という意外すぎる関係

 乳児の先天性心疾患は、妊娠中の母体の尿路感染症と関連しているらしい。

全米先天異常予防研究(National Birth Defects Prevention Study)の分析による。
米アーカンソー州立大医学部(UAMS)の人が、米国心臓協会・学術集会のポスターセッションで発表した。

妊娠中の尿路感染症と先天性心疾患の関係を明らかにするため、全米先天異常予防研究の結果をもとに分析を行った。この研究には、非症候性先天性心疾患の乳児を持つ3690人の女性と先天性心疾患のない乳児を持つ女性4760人が登録されていた。

 分析では、妊娠前1カ月から妊娠第1三半期の間に、一度でも尿路感染症を発症したことがある母親に焦点を当て、感染しなかった母親と比較した。なお、易感染性である糖尿病の女性は除外し、また先天性心疾患は、治療が可能な肺静脈還流異常あるいは房室系中隔欠陥、右側あるいは左側心臓欠陥などのうち一つ以上の異常とした。

 先天性疾患群と非先天性疾患群を比べたところ、患者背景では、先天性疾患群の方で男児が多く、また妊娠性糖尿病の発症も多く、母親の年齢が高いという特徴があった。

 分析の結果、左心低形成症候群(HLHS)の乳児を持つ母親の場合で、尿路感染症の発症率は対照群の1.7倍と有意に高いことが分かった(p<0.01)。また、この先天性心疾患と尿路感染症との関連性は、他の交絡因子とは独立していた。

 この結果から、「妊娠前1カ月から妊娠第1三半期の間に一度でも尿路感染症を発症したことがある母親では、左心低形成症候群の乳児を持つリスクが高まる可能性がある」と結論した。その上で、妊娠における尿路感染症への対策を進めることが、先天性心疾患のリスクを下げることにつながるだろうと指摘した。

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良くぞ着目したものだ。
そして、メカニズムには一切言及せず、集会でポスターを貼っただけだ。
でも、すごい人数の症例を集めたものだ。集めさえすれば、あとは秘書か大学院生にやらせればいいのだから、楽なものだ。

非症候性先天性心疾患の乳児を持つ3690人の女性とか、先天性疾患群と非先天性疾患群を比べたところとか、意味というか背景がいまひとつよく分からないが。

左心低形成症候群(HLHS)の乳児を持つ母親の場合で、尿路感染症の発症率は対照群の1.7倍と有意に高い、しかも、妊娠前1カ月から妊娠第1三半期の間にと期間の指定もついている。

いかにもありそうな話である。妊娠第1三半期はいいとして、「妊娠前一ヶ月」に注目である。示唆に富む。

それと、尿路感染症がいけないのか、その治療に使った薬剤がいけないのか、両方なのか知りたいところだ。
これは、もう結果は出ていても、二回に分ければ、二本論文ができるので、わざわざ分けて発表するのだろう。だって、もう数字は出ているに決まっているから。あるいは製薬会社と交渉中か?