プチうつにお絵かきアートセラピー

悩める「プチうつ」にお絵かきアートセラピー
気分がふさぎがちで治らない。でも病院に行く一歩が踏み出せない――そんな「プチうつ」時に気軽に参加できるのが、一般向けに開放されたアートセラピーのワークショップだ。最近では企業研修でも導入されるようになったアートセラピーに迫る。
2008年05月13日 07時45分 更新
 「参加したのはなぜですか?」。とあるアートセラピーのワークショップ参加者たちに聞いてみた。

 すると「自分がなにをしたいのか知りたくて」(女性会社員)「なにか発見できるかもしれない気がして」(休職中女性)「なんとなく面白そうだから」(女性会社員)。それぞれの答えが返ってきた。

自分探しにも活用されるアートセラピー
 
ワークショップは4月22日早朝に開催された。就業前にすでにクレヨンで手が汚れても平気。みな無我夢中で手を動かしていた

 アートセラピー(アートワークセラピー)とは、絵画を描く過程を通して、心をケアする心理学療法だ。といっても、堅苦しいものではない。参加者はクレヨンや色鉛筆を使い、真っ白な紙などに絵を描いていくだけ。絵には「自分とその周り」「大切なもの」などテーマに沿って描く場合と、テーマを決めない場合がある。

 このワークショップは、イベント盛りだくさんの朝EXPOの一環で行われた。講師を務めたのは、クエスト総合研究所の柴崎千桂子さん。

 セラピスト暦15年の柴崎さんは、「本来アートセラピーは、精神医療のフィールドで誕生したもの。この場合、患者にもよりますが、セラピー開始から数カ月~半年ほどである程度は心が回復します。(患者ではない)一般に開放しているワークショップの場合は、数回セラピーを受ければ十分です」と話す。
 
3枚目の絵に着手する参加者の佐藤康子さん(左)と、クレヨンだらけの佐藤さんの手(右)

 セラピーを進んで受けに来るのは、普通「少しエネルギーダウンした人たち」だという。筆者が眠気覚めやらぬ早朝の会場で目にしたのは、絵を描くにつれ徐々にエネルギーに満ちていく参加者たちである。

 就業前にすでにクレヨンで手や顔が汚れてしまったのも意に介さず、みな楽しそうに無我夢中で手を動かしている。なかには指示された2枚だけでは足らず、3枚の絵を描いた人もいたほどだ。柴崎さんによると、「絵を勉強している人や上手な人は構図を考えがち。知識がかえって邪魔してしまう」という。

 セラピー終了後に「参加してみて、どうでしたか?」と参加者たちに尋ねたところ、「楽しかった」と異口同音の答えが、はつらつとした笑顔と一緒に返ってきた。開催時間わずか1時間にもかかわらず、心のエネルギーが充足したという点では即効性があるように筆者には見えた。

うつやコミュニケーション対策に、企業でも注目されだしたアートセラピー
 
セラピストを養成するクエストアートセラピー養成スクール校長も務める柴崎さんと、柴崎さんの描いた絵

 「言葉を介さず、直接心の窓を開くのに大変有効だ」(柴崎さん)というアートセラピーは、「ここ1~2年で企業に導入されはじめている」。導入目的はさまざまだ。

 例えばグループでセラピーを受けたある企業では、人間関係がギクシャクしていたグループの全員で、1点の絵を描いてもらった。すると仕事に対する価値観やビジョンがバラバラな上、このことに誰も気づいていなかったことが判明。

 「そんなこと考えてたの?」と互いに驚き合ったという。さらに柴崎さんは、仕上げた絵をグループ全員の視界に入るところに飾るよう指示。「絵を見るたび、描いたとき一体になった感覚をよみがえらせる」のが目的だ。

 このセラピーに要した時間は2時間。だがグループ内のコミュニケーション活性化と個々人のビジョンの擦り合わせには十分効果があったという。

 企業セラピーの目的はこれだけではない。「今、ビジネスパーソンの4人に1人は、隠れうつだと言われていて、うつ予備軍が企業内にはたくさんいる」。クエスト総合研究所は今後、こうした隠れうつをアートセラピーで早期発見し、ストレスケアに役立てていく予定だという。また企業からのニーズを受け、同研究所では5月から企業へのセラピスト派遣サービスを開始したばかりだ。

企業も病院もNGな人にうってつけ、アートセラピーのワークショップ
 同研究所をはじめ、現在はさまざまなアートセラピー団体がワークショップを開催している。ただ受講者が男性の場合は、最初は抵抗感を示す場合が多いという。というのも「女性に比べ男性は、理論で納得したものしか受け入れない思考型の傾向が強い」からだ。このため「最初は非言語のアートセラピーを懐疑的な目で見る人も少なくない」。さらに他人に弱みを見せたくない傾向が重なるので「初めから積極的に足を運ぶ男性がいない」のだという。

 男性はパートナーの女性や企業に促されて、最初はいやいや受講するケースが多い。「もっと男性にも気軽に受講してほしい」と、柴崎氏。そのための配慮や対策を練っていく予定だ。

 もしあなたの勤めている企業や、企業と提携している産業医や医療団体がアートセラピーを取り入れている場合は利用してみるのも手。ただ会社を通じて受けるのは抵抗感がある、または診療内科やクリニックに行くまでの一歩がどうしても踏み出せない――そんな人は、アートセラピーのワークショップに気軽に行ってみては?

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「診療内科」と書いて、本人も校正も誰も気が付かないのだから、驚く。多分、誰もまじめに読んでいない。記事のかたちにしたコマーシャルのようなものか。
プチうつが自分探しという、昔ながらの構図。

自分探し系は昔からあって、自己啓発セミナーで儲けたあと、新宗教に行き、そのあとまた衣替えしているようだ。
研究所とかセラピー団体とか経営者ならどんな経営になっているか、見当が付くだろう。