ウィルスと進化とBlood-testis-barrier

冬になるといつも、インフルエンザだと言って騒いでいる。

ワクチンを接種してもいいですかと質問される。

インフルエンザウィルスは、確かに巧妙に変異を繰り返して、

人間の免疫システムをすり抜けているかのように見えるが、

人間の側でも、ウィルスを利用しているのではないかと私は考えている。

長い生物の歴史の中で、ウィルスとの、

ある種の共生が実現しているのには、理由がある。

それは、生物の進化を一気に促進するメカニズムに関係している。

よく言われるように、DNA変化が偶然で漸進的でしかなく、

とてつもなくゆっくり淘汰が進んでいくとしたら、

進化の中間形質の生物たちはどのようにして生きられたのか?

また、生殖行動や共生を考えれば、

一気に進化が進まなければ、都合が悪いだろうとは、容易に推定できる。

乳首が形成されることと、唇が形成されることは、同時でなければ意味がない。

なぜ同時に起こるか。

ここにある生物種がいて、割合安定して環境に適応しているとする。

栄養状態もよく、免疫状態もよい。

突然気候が変わり、森林が草原になったとする。

すると、歯の構造とか、消化の仕組みとか、移動の仕方とか、

いろいろと変化が必要になる。

たとえば、森林の中では枝につかまって移動していればよかったが、

草原では、足で地面を走ることが主な運動になる。

突然気候が変わった結果、

食料が変化し、

気候と食糧の両方に由来する不適応で、

栄養が悪くなり、免疫システムの働きが悪くなる。

つまり、種として、変化を要求されているわけだ。

免疫の働きが落ちているから、

いつもよりウィルスに感染しやすくなる。

ウィルスの中には、人間の遺伝子の一部を切り取って、運び出すものもある。

また、ウィルスは自分の遺伝子の一部を、人間の遺伝子に組み込むものもある。

種が全体として免疫が低下しているときにも、

うまく適応している個体はいるものだ。

環境が変われば、適応的な個体も変わる。

ウィルスは、そのような適応的な個体に入り込み、その個体の遺伝子の一部を切り取って運び出す。

そして弱った個体に入り込み、その遺伝子を埋め込む。

ここが肝心なのだけれど、体のあちこちの細胞の遺伝子に、

強い個体の遺伝子が組み込まれても、進化としては、あまり意味がない。

卵子は、生まれた最初から持っているものなのだから、これに遺伝子を組み込むのも、かなり難しい。

オスの精子に外来遺伝子を組み込むことなら、容易にできる。

変化させるなら精子の方が都合がいい。いつも新しくできているのだから。

そのためには、Blood-testis-barrierが破れればいい。

brain-blood-barrierは有名で、これがあるから、脳が守られている。

同じように、睾丸は守られている。

しかし、免疫システムの働きが低下したときには、

睾丸血液関門はオープンになり、血液中を流れるウィルスが睾丸に届き、

精子に外来の遺伝子を組み込む。

強い個体の場合、睾丸血液関門は守られているから、

自分の遺伝子を変えられることはない。

このような仕組みを考えれば、

栄養・免疫状態がよいときには安定していて、

栄養・免疫状態が悪いときには、

適応的な個体から、不適応な個体への、遺伝子の拡散が、

有性生殖によらずに、急速に起こる、

そのような都合のよいシステムが実現できる。

前足が手でもない、翼でもない、そんなこうもりは、長い時間を耐えられない。

さっさと翼の方向にみんなで変わらなければ、おしまいなのだ。

その進化の手助けをウィルスがしている。

免疫系は、防御システムでもあるが、

適応が悪くなったら、変化を受け入れるために、ウィルスが体の中に入りやすくする。

防御を緩めることに意味がある。

そして睾丸血液関門をオープンして、進化を促進する。

言い方は悪いが、

弱い個体は、ウィルス感染症にかかりやすくなることで、

自分を変える道を選んでいるのだ。

だから、免疫系が低下することは、悪いことばかりではないし、

感染症にかかることも、悪いことばかりでもないのだ。

弱い人がかかりやすくて、強い人はかかりにくいのも、

このように解釈すれば、進化に寄与する点で合目的的なのだ。

そこで研究としては、栄養・免疫状態を低下させた個体において、

睾丸血液関門が機能的に破られ易いことを証明すればよいのだ。

簡単に言えば、低栄養で寒いところに置いたマウスの睾丸血液関門を

顕微鏡で覗けばいい。

ウィルスに相当する程度の大きさの蛍光マーカーや放射線マーカーを血液に入れておいて、

どの程度関門が破れて、睾丸に届いているか、みればいい。

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オスはお互いに攻撃的になり、適応の程度を競う。

精子の方が変化し易いからだ。

どのような変化が適応的か、決めるために、戦う。

戦いに勝ったものが、遺伝子を広く放散する。

負けたものは、免疫低下して、遺伝子の組み込みを図り、

次世代には強い個体が生まれるようにする。

メスは妊娠してから出産まで時間がかかるし、

自分の遺伝子の優秀さを証明しアピールする必要はあまりない。

適応的なオスが一匹いれば、多くのメスが妊娠できるのだから、

争わなくてすむのだ。

メスは本当は風邪をひいても利益がない。

オスに風邪をうつして、遺伝子変化を促進する効果はある。

遺伝子と進化を考えれば、一夫一婦制は不合理な制度である。

ハーレム制のほうがずっと効率がいい。

一夫一婦制は、どちらかといえば、私有財産制と結合したもので、

財産を保全するためのものである。

特に人間の場合にも生物学的な理由はあまりないと思う。

したがって、建前としては一夫一婦制で、私有財産制を保持し、

生物としては、ハーレムを作ろうとする。

それが自然なのだ。

女性が生涯で何人か子供を産むとして、

平凡な自分を大切にしてくれる平凡な夫の子供のほかに、

イチローみたいな男の子供を一人くらい混ぜておいてもいいと願わないだろうか?

DNA鑑定によれば、女性は、子供5人に1人の割合で、

夫以外の男の子供を夫の子供だとして育てているらしい。

おとこは「そんなに多いのか!」と驚き、

おんなは「そんなに少ないのか!」と驚く。

そのようなことも、進化の原則から言えば、当然の圧力なのである。

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だいぶ嘘があるけれど、

ウィルスはそんなに簡単に血液中には移行しないので、安心してください。

だって、切れ痔の人でも、大腸菌が血液に侵入して敗血症にならないのだから。

(これも不思議でしょう?)