睡眠導入抗ヒスタミン剤 ドリエル ナイトール

日本では睡眠導入薬と名づけられた店頭販売医薬品(OTC)が、半年で100万個も売れたそうです。よく眠れない、良い睡眠が欲しいという程度の人を加えれば、不眠に悩む人は日本だけでも2千万人を超えるのではないかといわれていますから、快眠を求める市場は非常に大きいといえます。
睡眠薬の多くはベンゾジアゼピン系誘導体であり、最も普及しているのがトリアゾラムを配合したハルシオン(注1)ですが、ハルシオンは医師が処方する医薬品であり、OTCではありません。

エスエス製薬が2003年4月1日に売り出した、店頭販売医薬品(OTC)ドリエルの成分はヒスタミンH1受容体拮抗薬(抗ヒスタミン剤)の塩酸ジフェンヒドラミン(注2)です。グラクソのナイトールも主成分は塩酸ジフェンヒドラミン。

簡単に言えば、アレルギー性鼻炎の昔の薬の副作用で眠くなることを利用している。
医療用でいえば、ポララミンとかヒベルナ、アタラックスがそれにあたる。

風邪薬や鼻炎カプセルなどに配合される抗ヒスタミン剤に、催眠効果のあることはよく知られています(注5)が、ドリエルはその作用を利用した抗ヒスタミン剤であり、ハルシオンや米国ではOTCで販売されているメラトニン(Melatonin (N-acetyl-5-methoxytryptamine) とは作用が異なります。
したがって睡眠導入抗ヒスタミン剤は精神神経に関する疾病や、不眠症を治療するものではありません。

米国では、塩酸ジフェンヒドラミンは、主として、枯れ草病hay fever、花粉症、風邪などの鼻炎、涙目などのアレルギー症状や、虫さされのかゆみ止めに使用されている成分です。
塩酸ジフェンヒドラミンを配合した抗アレルギー薬品ではワーナーランバート社 Warner-Lambert CompanyのベナドリルBenadrylが最も著名といえます。(2000年にファイザー社Pfizer Incと合併したため、現在はファイザー社が販売しています)

米国にはレム睡眠(注4)を防ぎ、睡眠援助sleep aidというような表現で、睡眠導入効果を謳う店頭販売医薬品(OTC)が数多くあり、ほとんどがドリエルと同じ抗ヒスタミン剤ですが、使用されている成分は、やや異なります。 米国で最も著名な睡眠導入抗ヒスタミン剤は、ベナドリルを販売しているファイザー社のユニサムUnisomです。
抗ヒスタミン剤には大別して15種類の成分があります(注6)が、ユニサムはコハク酸ドキシラミン(注3)を配合しています。この他、ユニサムに競合する睡眠導入抗ヒスタミン剤にはマレイン酸クロフェニラミンChlorpheniramineやフマル酸クレマスチンClemastineを配合した商品があります。(これら抗ヒスタミン剤は日本の大衆風邪薬や目薬にも配合されています)

抗ヒスタミン剤類は副作用もありますから、連用することや、妊婦、幼児、アレルギー体質の方は避けることが賢明です。またドーピング禁止剤に指定されている成分もあります。胃腸疾患や代謝異常も不眠の原因になりますから、その治療も必要です。 軽度の不眠は食生活など生活習慣の変換により解消することが多いと言われていますから、生活習慣を再度チェックなさることをお奨めいたします。

ドリエルのサイトはよくできている。睡眠についてちょっとチェックしたいときに参考になる。
http://www.ssp.co.jp/drewell/05-01.html
http://www.ssp.co.jp/drewell/05-02.html
http://www.ssp.co.jp/drewell/05-03.html
http://www.ssp.co.jp/drewell/06.html

ナイトールのサイトはこちら
http://nytol.jp/pc/nebusoku/index.html
http://nytol.jp/pc/hint/index.html

注1)ハルシオンHalcion 成分名トリアゾラム triazolam C17H12Cl2N4 ベンゾジアゼピン系誘導体 benzodiazepine
ファルマシア株式会社Pharmacia& Upjohn Company (ファルマシア社は 2003.8.1ファイザー社Pfizer Incと合併)
注2)塩酸ジフェンヒドラミン Diphenhydramine hydrochloride、Antihistaminic, H 1 -receptor  2-(Diphenylmethoxy)-N,N-dimethylethylamine  C17H21NO・HCl.
 塩酸ジフェンヒドラミンは厚生労働省の作用別分類ガイドラインでは、抗炎症と鎮痛剤に分類されています。抗炎症と鎮痛剤は5種類に分類されていますが、塩酸ジフェンヒドラミンは、その内のヒスタミンH1受容体拮抗薬(抗ヒスタミン剤)に分類されます(注6)。
注3)コハク酸ドキシラミンDoxylamine Succinate Antihistaminic, H 1 -receptor  2-[alpha-(2-dimethylaminoethoxy)-alpha-methylbenzyl] pyridine, succinate C17H22N2O.C4H6O4
注4)レム睡眠 REM(Rapid Eye Movement)急速眼球運動
レム睡眠とは肉体が睡眠状態でも、眼球が動いたりする状態を指します。反語としてノンレム睡眠がありますが、これは脳が眠る状態です。一般的には、一回の睡眠中にレム睡眠とノンレム睡眠が繰り返されるようです。お酒に強い方は、深酒時にはレム睡眠時間が長くなり、すっきりした目覚めが無いことを感じているでしょう。
注5)脳の睡眠・覚醒に関係が深い視床下部の後部には、興奮性ニューロンといわれるヒスタミンニューロンが多く存在しています。その末端から放出されるヒスタミンは、大脳皮質をはじめ脳の様々な部位の神経細胞を興奮させることによって覚醒の維持・調節をしています。塩酸ジフェンヒドラミンは、このヒスタミンの作用を抑制して、睡眠鎮静作用をあらわすと考えられています(エスエス製薬)。
注6)ヒスタミンH1受容体拮抗薬成分 Antihistaminic, H 1 -receptor
アザタディンAzatadine
ブロムフェニラミンBrompheniramine
セティラジンCetirizine
クロフェニラミンChlorpheniramine
クレマスティンClemastine
シプロヘプタディンCyproheptadine
デスロラタディンDesloratadine
デクスクロフェニラミンDexchlorpheniramine
ディメンヒドリネイトDimenhydrinate
ディフェンヒドラミンDiphenhydramine
ドキシラミンDoxylamine
フェクソフェナディンFexofenadine
ヒドロキシジンHydroxyzine
ロラタディンLoratadine
フェニンダミンPhenindamine: