1人で行う、自分へのカウンセリング法

1人で行う、自分へのカウンセリング法
ストレスの多い毎日。自分で自分の感情をコントロールできれば、と思うことはないだろうか。今回は、落ち込んだときや、ちょっとした不安を感じたときに、自分できっかけを探ってリカバリーすることができる、簡単なカウンセリング方法を紹介します。
2007年12月10日 15時51分 更新
10分でできる簡易セルフカウンセリング
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「あのときに戻れるとしたら」どうする?
“不安”と“恐怖”を明確にして、不安を解消する
1人で行う、自分へのカウンセリング法 

うつなど、精神的な病の症状には、出来事が引き金となっている場合、その症状で何かを得ている場合、考え過ぎて症状が出る場合の3パターンがあります。これは非常に高度な話なのでここでは述べませんが、症状が出る前後に何があったかを明確にするだけで、多くの場合は落ち着きを取り戻します。

 同じように、落ち込んだときや、ちょっとした不安を感じるときでも、そのネガティブな感情を特定し、そのときの出来事を詳しく思い出し、自分の感情、思考、行動、そして結末を明確化することで、大抵の場合は落ち着くことができます。今回は、そのやり方を紹介しましょう。

ステップ1:不安なこと、落ち込んでいることを特定する
 まず、最近感じるネガティブな感情を特定します。なんか落ち込んでいるなぁ」とか、「不安な感じがする」だとか、「ちょっとしたことなんだけど昨日から気が滅入る」、「なんだか気分が乗らない」「心配だ」「なんだか悲しい気分だ」──などです。それほど深刻じゃなくても、むなしいなと感じる時って、誰しもあるものですよね。一生懸命営業してバンバン取っていたけれど、フッとむなしくなっているときなど、そういう感情を特定してみてください。

ステップ2:4W1Hで具体的な出来事を思い出す
 次に、それを感じ始めた具体的な出来事に遡ります。あれは先週の金曜日の朝、休み明け月曜日の午前中──それくらい具体的に特定してください。そうしたら、4W1Hで、具体的な内容を思い出してください。

いつから? 「先週の火曜日の午後くらい」
どこで? 「会社の会議室で」
誰と? 「○○課長と」
何をしていた? 「ミーティングをしていた。そのとき、課長がすごい剣幕で怒っていた」
 といった感じです。

 この後、その出来事に対しての自分の「感情」「思考」「行動」、そして「結末」を延々と自分に聞き続けます。これは1回だけではなく、気が済むまでやってください。聞く順番もバラバラでいいですが、「感情」→「思考」→「行動」→「結末」の順番で聞くのが比較的思い出しやすいとは思います。例えば、下記のようにやります。

問 怒鳴られて、どう感じた?(感情)

「すごく、ビクビクした気持ちになった」

問 どう考えた?(思考)

「なんでこんなに怒られなきゃいけないんだ、と思った」

問 どうした?(行動)

「黙って泣き寝入りした」

問 その結果、どうなった?(結末)

「課長が余計、怒った」

問 その結果?(結末)

「ちょっと落ちついてきた」

問 それで、どう感じた?(感情)

「むしゃくしゃしてたけれど、もうこのままでいいや、と思った」

問 どう考えた?(思考)

「もう、がまんしようと思った」

問 そしてどうした?(行動)

「そのまま書き直した」


 というような感じです。順番はバラバラでいいので、自分の気が済むまで、その出来事があったときの「感情」「思考」「行動」「結末」を問いかけていきます。

 やり方としては3パターンあります。一番簡単なのは、下の表を指やペンで指しながらやる方法です。

 例えば、こんな感じです。

無題20080520.PNG


 というようにやっていきます。表を指やペンで指しながら、1人でブツブツとやってみてください。

 2つ目は書き出す方法です。紙に大きく、感情の「感」、思考の「思」、行動の「行」、結末の「結」と書いて、それぞれの部分に出来事を、順序を問わず書き出していきます。そのうちにスッキリしてきます。

 実際に私がカウンセリングをするときは、椅子を3つか4つ用意して、移動しながらしゃべる方法をとります。正直、これが一番効果があります。

「なんかやってらんないよな。まあ、スーパーでも行ってみようか」(椅子を変わる)
スーパーに行きながら「本当に楽しいのかな」と感じて(椅子を変わる)
結局何も買わずに帰った。
 という感じです。

不安を引き起こした出来事に対してアクションを起こす
 ほとんどの場合は、ステップ2をやって、自分を落ち込ませていた出来事や感情に気づいただけで楽になります。しかし、2~3割は、「これをやらなきゃスッキリしない」という行動が出てきます。

 例えば、私が20代のころの例を紹介しましょう。

 どうも昨日から気持ちが滅入る。具体的に、いつから滅入っているのだろうと考えてみよう。今朝、起きたときにはもう滅入っていた。昨日の朝はなんともなかった。昨日の午後も滅入っていなかった。

 いつからかな、昨日、寝るあたりからだ。何があったかな。そういえば昨日、友だちと久しぶりに電話で話した。電話を始めたときはどうだったか。いや、滅入ってなかった。途中から、電話を切るあたりから気持ちが滅入ってきた。切る前、どんな話をしていたかな。

 4W1Hで自分自身に聞いていきます。昨日の夜、1時間、友達と電話で楽しく話していたんだけど、切る前に、「バカじゃん、お前。お前にできっこないよ。はっはっはっ」みたいに笑われた。そのあたりから気が滅入りだした。

 そして、「感情」「思考」「行動」「結末」を問いかけていきます。

(どう考えた?)いや、彼には悪気がないし、本当はできると思ってくれている。悪気はないと分かっているから、別に言い返す必要もない。
(結末は?)でも、電話を切ったあともなんとなく後味が悪かった。
(それで、どう考えた?)昨日、寝るときは、まあ気にしなくていいや、と思った。
(そのときの感情は?)感情はなんかモヤモヤしていた。
(行動は?)そのまま、何もしなかった。
(結末は?)朝、起きても気分が晴れなかった。


 ここで、「なんだ、あんな風に言われたから気が滅入っていたんだ」と分かって楽になる場合と、「やっぱり、友だちとはいえ、あんなふうに言われると、冗談だとは分かっていても嫌な感じする」となる場合とがあります。このように楽にならない場合はどうするか。この私の例では、「今日もう一度電話をして、責めるのではなくて、自分の気持ちを伝えておこう」ということになりました。そこで、相手を責めずに、冷静に話をしました。

 「昨日、電話でいろいろ楽しかったね。ちょっと1つだけ気になることがあったんで、言っていいかな」

 「何?」

 「いや。絶対、悪気がないってわかっているんだけど、『バカだな◯、お前にできっこないよ』って言われたときさ、ちょっとショックでさ。お前にはもうちょっとサポートしてほしかったんだ。でも、そんな言われ方したのが、ちょっとね、気になっちゃったから、一応、伝えたいと思って電話したんだ」

 と冷静に伝えます。そうすると向こうも「ごめん、ごめん。悪気はなかったんだよ、ホント。オレはお前が絶対できると思ったから、冗談で反対に言っちゃったんだよ」


 こう言ってくれると、「ああ、やっぱりそうだよね。ありがとう」ということで、スッと楽になります。

 ほとんどの場合は気が付いて終わりますが、2~3割は、それに対してアクションを起こします。そのアクションが、「テメー! あんな言い方しやがって!」というのではダメですね。そんなことをすると、向こうも「オレだって、悪気はなかったんだよっ!(怒)」みたいになっちゃうので、その言い方はコミュニケーションスキルを活用して、冷静で相手を傷つけないアサーティブな言い方にすることが必要です。

 人間は思考、感情、行動ですごく気持ちが振り回されるので、これを明確化していくだけで簡単なセルフカウンセリングができます。この方法で、たいていの小さな不安感は解消されます。もちろん、病気のうつ病には対応できませんが、一般的な軽い不安感だったら、これを1人でやっても楽になれます。実際、私も自分でやっています。

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