妊婦の魚摂取はリスクよりも利益が上回る

妊婦の魚摂取はリスクよりも利益が上回る 
 
   米国では2001年、米国食品医薬品局(FDA)および米国環境保護局(EPA)が、「妊婦は魚の摂取を週に12オンス(約340g)以内に控えるべき」との勧告を行った。魚介類に水銀が含まれる可能性があるとの理由からである。しかし今回、米国で母子健康向上を推進する団体HMHB(National Healthy Mothers, Healthy Babies Coalition)は、この警告は誤りであると指摘。水銀の問題よりも、魚類に含まれるオメガ-3脂肪酸の不足による害の方が深刻で、女性はもっと魚介類を食べるべきだという。この勧告は、ワシントンD.C.で開催された米国記者クラブ会議で発表された。


 HMHBは、米国小児科学会(AAP)、ボランティア団体March of Dimes、政府機関である米国疾病予防管理センター(CDC)なども構成メンバーとなっている非営利団体。そのメンバーの一人、ニューヨーク大学メディカルセンター助教授のAshley S. Roman博士は、FDAおよびEPAの勧告により多くの女性が魚の摂取を恐れているが、妊娠中のバランスのとれた食事に魚は欠かせないと述べている。


 魚介類の摂取は、胎児の脳の発達、認知・運動能力の向上、早産や産後うつ病のリスク軽減など、数多くの利益をもたらすことが裏付けられているという。週12オンス以上の魚の摂取で、胎児によい影響がみられることも複数の研究で示されており、オメガ-3脂肪酸の摂取が不十分であると、母体と胎児の両方に健康リスクが生じる。米国民健康栄養調査(NHNES)のデータによれば、米国女性の90%は魚の摂取量がFDAの摂取推奨量に達しておらず、オメガ-3脂肪酸の摂取が不足していることがわかっている。別の研究では、FDAおよびEPAの警告により、妊婦の56%が魚の摂取を控えていることも判明した。


 「妊娠を望む女性、妊婦、母乳育児中の女性は怖がらずにサケ、マグロ、イワシ、サバなどを週に12オンス以上食べるべきである」とRoman氏は勧めている。魚を食べられない場合は、魚油サプリメント(栄養補助食品)で代用してもよい。また、魚介類に含まれるセレニウムには水銀の有害作用を抑えるはたらきがあることもわかっている。魚に含まれる一成分だけではなく、魚全体で考えるべきだとRoman氏は指摘する。


 他の専門家らも、オメガ-3脂肪酸を十分に摂らないことの方が、微量の水銀摂取よりも危険と同意している。魚に含まれる水銀の有害性が示された過去の事例は、日本で発生した工業汚染のケース(水俣病)のみであり、それ以外には世界のどこでも魚の摂取による被害は報告されていないとのこと。
 
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水銀だ。