有効な多剤併用療法に関して

単剤治療と多剤併用療法には長所短所がある

各薬剤の効果を評価するには単剤治療がよい。

薬剤のプロフィールがおおむね分かってきたら、
多剤併用療法も意味がある

たとえば、ターゲットがドーパミン遮断(D)、セロトニン増加(S)、ノルアドレナリン増加(N)、などの場合。副作用をE1,E2,E3などとすると

薬剤X=dD+sS+nN+aE1+bE2+cE3となり
薬剤Y,Zなどについても同様になる
そこで併用した場合に、
Effect=xX+yY+zZ
であり、これはxyzを調整すれば最適解が得られるはずである。
つまりおおむねをいえば、DSNについては有効血中濃度を確保し、
E1,E2,E3に関しては、閾値を超えないようにすれば、
副作用は起こらずに、十分な効果を期待できる。

現状ではうつ病の場合、SDNなど他系統の関与が確実であり、
単剤で処方するにはターゲットを一つと限定するか、
あるいは、Dual Effectの薬を使うかということになるが、
dual effectの薬を使うならば厳密に単剤とは言えないもので、
むしろ、二剤を独立して量を調整した方が自由な調整ができる。

最近では、最初にDSのデュアル、次にSNのデュアル、今後はDNのデュアルなど、製剤の開発が進んでいる。

すごく単純にいうと
薬剤1はセロトニン効果1/2+便秘1/2+眠気1/2
薬剤2はセロトニン効果1/2+ノルアドレナリン効果1+下痢1/2+胃もたれ1/2
とした場合、
薬剤1でセロトニン効果1を得るためには便秘1、眠気1になってしまい、
我慢してくださいということになってしまう。
薬剤2でセロトニン効果1とすればノルアドレナリン効果は2となってしまい過剰であるし、
下痢をして胃もたれが出るということになる。

ところが
薬剤1+2とした場合は、
セロトニン効果は1、ノルアドレナリン効果は1,
便秘と下痢で消しあい、
眠気、胃もたれは1/2だけで症状とならない。
こうなれば、効果だけは確実で、
副作用は抑えることができる。

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また別の考えで、
時間に関しての多剤併用がある

それぞれの薬剤で血中濃度のプロフィールが異なる。
ゆっくり上がってゆっくり下がるもの
急に上がって急に下がるもの
別の物質があればそれに反応して上下するもの

それぞれの特性を利用して、一日がほぼ一定になるようにする
あるいはさらに高等な戦術として
一日のうちで一回だけ必要治療濃度を超えて、あとは下回る、
そのような時間計画をすることもできる。

また時間によって
不安の強いはずの時間には不安を抑える成分を
眠る前には多少眠気が亢進する成分をと考えることもできる。

それも上述と同じような連立方程式の最適解の問題であって
さして難しくはない。

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血糖値をコントロールする薬でも、
強さと時間の関係を考えて、
多剤を併用したりする。

血圧の薬の場合は、
時間プロフィールに加えて作用機序の違いによる選択がなされる
たとえば腎臓を保護するとか、早朝血圧をコントロールしやすいとか。