上司に配慮するサラリーマン

こんどは上司との関係をどうするかの例


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人事評価に限らず、日々の仕事や職場の人間関係、取引先への対応の中で、上司とあなたの間に意識のギャップは生まれていることでしょう。

 でも、深く考え込まない方がいいです。あなた以外にもたくさんの人が同じギャップに悩んでいます。

 2年程前、人材バンクを訪れる人たちに、「(前の会社を)退職した理由」をテーマに取材していた時、20代後半の男性がこんなことを話していました。

 「上司が求めていることは、私が職場でリーダーシップを発揮することだと思っていました。だから、皆によく頑張ろうと声をかけるように心がけていた。そうしていたら、上司に“お前がそんなことを言うのは、まだ3年早い!”といきなり叱られた。なぜ叱られたかいまだによく分からない」

 これは、上司が彼(=20代後半の男性)に求めているものと、彼が上司に求められていると思っていたことが違っていたからでしょう。

 ほかの退職者(20人程のうち15人程)も、これと似たようなことを話していたのが印象的でした。

 そもそも、管理職と非管理職とでは立場が違うのですから、考え方は違ってくるでしょう。そう考えると、双方の間でギャップが生まれるのは、むしろ当たり前だと筆者は考えます。

 大切なのは、あなたがその差を埋めようとしているかどうかです。差を埋めることなく、自分の考えを正当化しようとすると、結局は、彼のようにギャップを持ったまま会社を辞めてしまうかもしれません。

 上司との意識の差に気がついたあなたの前には、2つの選択肢があると筆者は思います。

 ◆ギャップを放置したままで、「上司とはウマが合わない!」と嘆き、夜は近くの居
   酒屋で、出来の悪い同僚らと“上司批判”を展開する。
 ◆ギャップがあることを素直に認め、その溝を埋めるために何をどうしたらいいの
   か戦略的に考える。そのうえで具体的な行動に移し、上司をうまく操縦する。

 かつて筆者は前者の行動を取っていました。身を持って経験しているからこそ言えるのですが、こうした姿勢でいると、上司はもちろん、ほかの同僚とも良い関係が築けなくなります。それが、仕事に悪い影響を与えていくのです。
 
 だからこそ自信をもってお勧めします。あなたは迷うことなく、後者を選ぶべきです。

 そこで試みたいのが、心理学で「ジョハリの窓」と呼ばれるグラフモデルです。これを応用させて、上司との意識の差を埋めてみましょう。「ジョハリの窓」とは、1950年代にアメリカの心理学者が発表した、人間関係において自分を見つめ直すモデルのことです。

 このモデルを使って、「自分では気がついていないが、他人からはすでに認識されている自分の姿」や、「まだ誰も知らない自分の姿」などを浮き彫りにできると考えられています。

 今回は、上司との意識のギャップを埋めるために、「ジョハリの窓」を当コラム「職場を生き抜け!」用にアレンジした「職場サバイバルの窓」を使って考えてみましょう。

縦軸は「あなた」、横軸は「上司」。そして、それぞれの中に「知っている」「知らない」という項目を設けます。「知っている」「知らない」の対象は、日々の仕事や人間関係、取引先との関係などになります。

 例えば、前述の20代後半の男性が愚痴をこぼしていた「リーダーシップを発揮する」は、表の中の3に位置します。

 彼は、それを上司から求められていると思い込んでいたのですから、当然、「知っている」ことになります。しかし、上司はそれを「知らない」のです。つまり、ギャップが生じていたと言えます。

 あなたがギャップを感じたのは、3に位置している仕事に力を入れていたからなのではないかな、と思います。

 今後、あなたが職場で最も力を入れるべきは、上司とあなたの双方が「知っている」部分、つまり、表の左上に位置する1のところです。

 1は、あなたがおそらく「得意」としている仕事であり、日ごろから上司もそれをある程度、認めているのではないでしょうか?

 1の次に力を入れるべきは、2です。ここは、上司ははっきりと口にするかどうかは分かりませんが、あなたに求めているものであり、「知っている」ものです。ところが、あなたは知らない。これが問題です!

 筆者は会社員の頃、「君は20代の連中をぐいぐいと引っ張る力があるわけだし、そうしてもらわないと困るよ…」と言われたことがあります。しかし、筆者はひたすら自分の仕事だけをしていました。これを放置すると、上司は「リーダーシップに欠ける」などと、評価しがちです。事実、筆者の評価表にはそのような内容が記載されていました。

 3は、あなたは「知っている」のですが、上司は「知らない」というものです。筆者の経験上、あなたがここに力を入れるのは得策ではありません。「知らない」上司を説得するのは、相当な時間とエネルギーがかかります。

 あなたは、あくまで上司が「知っている」1や2を優先していくべきです。理想を言えば、上司は3を「知っている」ようになるべきだとは思いますが、上司に過剰な期待は禁物です。
 
 上司もあなたも双方が「知らない」のが、表の右下にある4です。3と同じく、あなたはここに該当する仕事にはあまり力を入れるべきではないでしょう。そもそも、上司はここを認識できていないので、指示さえもしてこないのではないかと思われます。

 以上を考えると、優先順位は1→2→3→4となりますが、上司とのギャップを埋めるには、1と2で十分でしょう。

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縦軸は「あなた」、横軸は「上司」。そして、それぞれの中に「知っている」「知らない」という項目を設けます。「知っている」「知らない」の対象は、日々の仕事や人間関係、取引先との関係などになります。

 例えば、前述の20代後半の男性が愚痴をこぼしていた「リーダーシップを発揮する」は、表の中の3に位置します。

 彼は、それを上司から求められていると思い込んでいたのですから、当然、「知っている」ことになります。しかし、上司はそれを「知らない」のです。つまり、ギャップが生じていたと言えます。

 あなたがギャップを感じたのは、3に位置している仕事に力を入れていたからなのではないかな、と思います。

 今後、あなたが職場で最も力を入れるべきは、上司とあなたの双方が「知っている」部分、つ
まり、表の左上に位置する1のところです。

 1は、あなたがおそらく「得意」としている仕事であり、日ごろから上司もそれをある程度、認めているのではないでしょうか?

 1の次に力を入れるべきは、2です。ここは、上司ははっきりと口にするかどうかは分かりませんが、あなたに求めているものであり、「知っている」ものです。ところが、あなたは知らない。これが問題です!

 筆者は会社員の頃、「君は20代の連中をぐいぐいと引っ張る力があるわけだし、そうしてもらわないと困るよ…」と言われたことがあります。しかし、筆者はひたすら自分の仕事だけをしていました。これを放置すると、上司は「リーダーシップに欠ける」などと、評価しがちです。事実、筆者の評価表にはそのような内容が記載されていました。

 3は、あなたは「知っている」のですが、上司は「知らない」というものです。筆者の経験上、あなたがここに力を入れるのは得策ではありません。「知らない」上司を説得するのは、相当な時間とエネルギーがかかります。

 あなたは、あくまで上司が「知っている」1や2を優先していくべきです。理想を言えば、上司は3を「知っている」ようになるべきだとは思いますが、上司に過剰な期待は禁物です。
 
 上司もあなたも双方が「知らない」のが、表の右下にある4です。3と同じく、あなたはここに該当する仕事にはあまり力を入れるべきではないでしょう。そもそも、上司はここを認識できていないので、指示さえもしてこないのではないかと思われます。

 以上を考えると、優先順位は1→2→3→4となりますが、上司とのギャップを埋めるには、1と2で十分でしょう。

これまでのことを踏まえたら、さっそく日々の仕事や人間関係などを、以下のように思いつくままに書き出してみましょう。あなたがたくさん仕事をしているならば、その数はきっと10を超えるでしょう。

(例)
 ・得意先回り、特に年間契約金1000万円以上のところを1カ月に数回は回る。
 ・職場で後輩の仕事(取引先への書類の送付など)をできるだけサポートする。
 ・取引先(中規模の会社)とのメーリングリストを開設し、その運用をする。

 ポイントは、極力、数字や固有名詞を盛り込んで書くこと。そうすると、自然に具体的になり、イメージが湧いてくるはずです。

 次に、アトランダムに書き出したものを前述の表の中に分類していきます。例えば、「年間契約金1000万円以上のところを1ヶ月に数回は回る」ならば、あなたは当然、「知っている」ことになります。

 では、上司はどうでしょうか?それをよく考えて(想像して)、該当するところに書き込むことです。ひとりよがりは禁物です。

 上司が「知っている」かどうかは、上司の指示内容や、繰り返し発言している内容に加えて、あなたが上司に報告している内容などから判断しましょう。

 上司があなたに「おい、あの会社を回っているんだろう?その後、どうなっているんだ?」と尋ねてくるならば、その仕事は1に該当します。

 このようにして、いままでの上司とのやりとりを丹念に振り返りながら、書き出した仕事を1つずつ1~4の中に書き込んでいきます。そうすると、次第に、上司とあなたとの意識のギャップが浮き彫りになってきます。

 ここまできたら、あなたが今後、力を入れるべきところはもう見えてきますよね。もちろん、1に書き出したものです。その次に力を入れるべきは2です。

 さっそく今日から、1と2に力を注ぎ込みましょう。これを積み重ねていくと、上司があなたのことを認める可能性が高くなります。

 上司とあなたの意識のギャップがあるならば、それはあなた自身が埋めることです。今回、紹介した「職場サバイバルの窓」を使って、上司との意識のギャップを少しでも埋めることを考えてみましょう。