運動の工夫

Q:1回30分以上の運動をする時間なんてありません。

A毎日する必要はありません。健康づくりや糖尿病予防のために1週間に合計60分の運動からはじめてみましょう

生活習慣病の発症および死亡リスクを減少することが示唆されている身体活動量(運動・生活活動)の基準を、受診者がクリアしているかどうかを確認するため設定されているのが質問票「10」「11」です。

指導では、この項目を活用すること(対象者の反応)で、対象者の現在の身体活動ステージを確認し、どのような運動内容が適しているかを確認することができます。

10 1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施 (1)はい
(2)いいえ
11 日常生活において歩行又は同等の身体活動を1日1時間以上実施 (1)はい
(2)いいえ

「10」は、「エクササイズガイド2006」で生活習慣病予防に必要な身体活動量の目標値として掲げられている「週23エクササイズの身体活動(運動・生活活動)を! そのうち4エクササイズ以上は運動強度3METs以上の“運動”を」の目標に達しているかどうかを確認する項目です。特に目標の後半部分「3METs以上の“運動”」を行っているかどうかに限定して設定されています。対象者の現在の運動ステージの高低を把握するためです。なおここでいう「運動」とは図の左半分に例示されているような筋トレやゴルフといった積極姿勢(準備)が必要な身体活動で、イメージしやすいように「軽く汗をかく」という主観的感覚の文言を加えた問いかけとなっています。

指導では、質問に対する反応が「はい」であれば、より高度な「運動」メニューを促すことが可能です。「いいえ」であれば、「運動」に取り組むことを促すか、もしくは日常生活の延長で取り組める程度の「生活活動」メニューから促すことになります。

Qのような反応の場合は後者を提案します。このような対象者への指導では、「取り組めるかもしれない」と思えるメニューから提案することが大切です。

続く質問票「11」は、生活習慣病予防に必要な身体活動量の「下限値」がクリアできているかを確認する項目です。下限値は「週19~26エクササイズ」の間に分布していて、「歩行」(普通歩行)で換算すると1日当たり54~74分を毎日実施する活動量に相当します。この質問が「はい」であれば、生活活動量を増やす提案とともに、次のステップとして「運動」メニューを促すことも可能です。「いいえ」であれば、生活活動量を増やす提案がまずは適当です。
「今は忙しくて食事や運動療法をやることができません」
「事務仕事が中心で、ほとんど体を動かさないんです」
対象者はさまざまな反応を示すでしょうが、いずれもステージ見極めの指標として活用できます。

エクササイズガイド2006」に、「ステージに応じた目標達成のためのアドバイス」(p25)のより詳細な具体例が示されていて参考になります。