山内教授のうつのお話-2

司会.神経細胞の実際の形まで分かりました。続きを名誉教授にお願いいたします。

PEY.神経細胞には小さなものから大きなものまで、短いものから長いものまで、様々あります。体の隅々まで神経が張りめぐらされ、脳とつながっているわけです。
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上が脳神経や自律神経の回路です。
脳から心臓、脳から胃、などずいぶん長いものもあります。
運動神経も、脊髄から筋肉まで、たとえば、足の先までを考えればかなり長いものです。長い上に、ひざの裏などを走っているので、しばらく正座をしたりするとしびれてしまいますね。
背の高いバレーボールの選手やバスケットボールの選手は、脳から神経を通って、筋肉までの距離が長いから大変なわけです。

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運動系では、大脳運動野とは別に、小脳の支配もあります。小脳回路の研究はだいぶ進んでいる分野です。
これも後で大切なので覚えておいて下さい。

さて、こうした経路のそれぞれで働きが悪くなる病気があって、
血管が詰まった場合とか、
神経細胞そのものが変性した場合などに見られます。
すると直接、その場所の機能が失われて、その場所がどんな機能を担っていたのかが分かります。
まっすぐ歩けなくなったり、吐き気がしたり、手が震えたり、ものが二重に見えたり、食事をするごとに涙が出たり、いろいろなことが起こります。

もうひとつ、その機能があるので抑制されていた下位の機能が現れるという事情もあり、症状の観察を難しくします。ジャクソニスムと呼んでいます。
よく、脳血管障害で片麻痺になったことの膝蓋腱反射をやってみたりしていますね。ひざを打鍵基で叩くと、普通以上にポーンはねてしまうわけです。そういうのが脱抑制症状ですね。

それでかなりのことは説明できるんですが、うつ病、躁うつ病、統合失調症、てんかんなどは正確な病気のしくみがまだよく分かっていません。

そこで、今日は躁うつ病について、すこし解説してみようと思います。

司会.ここでお昼ですので、食事のあとにもう一度はじめましょう。