モチベーショナル・インタヴューイング(動機付け面接)

モチベーショナル・インタヴューイング(動機付け面接) について
甲府住吉病院の院長先生のブログから収録。

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今日は「退院準備プログラム委員会」がありました。私たちの持っている退院準備プログラムには、(主に)長期入院されている方が地域生活に再参加するために必要なスキルのうち、どういったものを提供しているのかという分析をしてみました。

いくつかのスキルをあげていくうちに「退院についてのモチベーションをどうやってあげるか」という課題が残りました。

最近、モチベーションをあげる方法としては「モチベーショナル・インタヴューイング(動機付け面接)」というものを聞いたことがあります。

Motivational Intervewing(MI)は、困難な状況でにっちもさっちもいかない、”今のままで仕方がない,と考えている人と話し、変化する方向に向けていく”ためのスキルとされています。

人が行動を変えない理由は何でしょうか。

・今までのやり方をかえることと、今までのやり方を変える必要がない理由を証明すること、
 どちらかを自分で選びなさいと言われたら、ほとんどの人は証明の方を選ぶ
 (John Galbraith)

・ストレスが高まり、そしてその反応として何か変えようとするときに、人はいつも自分自身の
 行動レパートリーの中で最もよく使う問題解決法で必要を満たそうとする。
 たとえその方法が役立たないとしても。

これらを変化させていくためのスキルがMIというわけです。MIにはいくつかの原則やプリンシパルがありますが、その中のひとつに、OARSという面接者の手順が示されています。それは、

1.開かれた質問(Open-ended questions)
2.是認(Affirmations)
3.聞き返し(Reflections)
4.要約(Summaries)

です。開かれた質問は、クライエントが自由に自分自身の考えを述べ、その中から解決法を自分で探し出していけるように配慮した質問の方法です。したがって「はい/いいえ」で答えられる質問ではなく、「どうやって?」とか「どう思い/感じますか?」など、答えを引き出すような質問になっています。その質問によって、クライエント自身によって

1.問題の認識
2.気がかりな点
3.変化への意思
4.希望を持つこと

が構成されるように会話をつなげていくものです。クライエントの自由な考えを引き出していくためには、善悪の価値判断は避けるべきで、会話の冒頭に「しかし」「でも」は禁句です。「なるほど!」と感心したり、違った意見を述べる場合には「一方では」というようにすると良いようです。

カウンセリング・スキルとしてのMIも重要ですが、そのマインドは日常のかかわりの中でもいかされるべきものと思われます。

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Motivational Intervewingの領域
・MIに関するMillerの最初論文発表(1983)
・Motivational Intervewing初版(1989)
•著者:Miller,Rollnick(心理学者)
アルコール依存薬物依存などアディクションの治療
•MI訓練ネットワーキング(1995)設立
•MIビデオ出版(中国・伊・仏・独などで翻訳)
・Motivational Intervewing第2版(2002)
Motivational Intervewingの理論的基盤
実践における適用など25章から構成
アルコール依存・肥満・糖尿病・心疾患・禁煙・精神疾患

Motivational Intervewingの定義
クライエント中心技法であり、
アンビバレンス(反対感情の並存)
を探り、解決することによって、
変化への内的なモチベーションを高めるものである。
治療(Treatment)や療法(Therapy)とは本質的に異なる

Motivational Intervewingの基盤となるスピリット
•協働(Collaboration)
•実践者と対象者との関係は同じ水平的立場
•実践者は、肯定的な人間関係的環境を創る
•喚起(Evocation):呼び起こす
•協働する時の実践者の姿勢や声の調子は
•何かを他者に授けるというものではない
•自律(Autonomy)
•変化に対する個人の能力を信じること
•What  do you want to do?
•変容を促す会話(Change Talk)

行動変化を促すための動機づけ質問技法の進め方
•課題の設定
•重要性を認識する(Identify Personal Values)
•不協和状態を作る(Create Dissonance)
•個人の価値と最近の行動を比較する
•目標をたてる(Set Goals)
•計画を立てて実行する(Develop Plan and Implement)
From G.Welch

課題の設定ー扉を開ける
(協働的関係を作り出す)
・患者が変えたいと思う部分について、十分に話し合う機会を提供する
・緊急の課題
・医療職者にとって、重要な課題
ドアをノックするようなもの
「個人的な事柄についてお聞きしてよいでしょうか」
「もしよろしければ、計画について説明しようと思いますが・・・」

重要性を認識する・・・20の項目の中から、5選ぶ
•心丈夫・安全・生活力や他への影響力
•友情・人生を楽しむことや挑戦
•良好な健康状態・退職後の満足
•配偶者や子どもとの関係・長寿
•他の家族との関係・旅行の機会
•仕事や昇格・他人からの尊敬を得る
•有意義な職場環境・精神的な達成感
•経済力・社会の役に立つ
•地域環境での生活・自由な時間がある
•自信に満ちた外見や容貌
・名声や社会からの尊敬

最も価値のある(Highest)ものを明確にすることが、行動変容への動機づけにつながる

Set Goals目標を立てる
•可能性のある解決策は、その個人から生まれる。
•自分自身をささえるために、責任を自分自身がもつ。
•患者自身が、障碍にうまく対処できるようになる。
•解決策は、医療職者の処方から生まれるのではない。
•医療職者は、患者のたてた解決策が、科学的根拠にもとづくか?判断する役割を担う。

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概略このような感じ。
アルコールをやめるとか、糖尿病でカロリーコントロールするとか、
そのあたりのことらしい。

「今のままでは仕方がない」と思いつつ、
「どうすればいいか分からない」と思う人は多いので、
このような方法を技法として意識すれば、
「何をすればいいか」がはっきりしてくると思います。