認知矯正法 無誤謬学習

心理社会的リハビリテーション ~動機づけが重要~
従来、リハビリテーションとは日常生活機能をターゲットにしたものが多く、認知療法も行動療法的な色彩が強かったように思います。しかし最近はそれに対して、認知機能そのものを改善しようとするトレーニングが開発されるようになりました。そのひとつに、認知矯正法があります。これは学習障害への援助方法に基づいたアプローチで、具体的な教示・反応直後の正のフィードバック・動機づけ(モチベーション)の強化・無誤謬学習(errorless learning)などを用いて、認知機能の改善を目指します。さらに興味深いことにこの認知矯正法によっても左前頭葉の血流が増加し、言語性記憶が改善することも証明されつつあります。

ただし限界もあり、この方法で改善の難しいケースがあることも事実です。その場合は認知障害を補う方法が必要になります。患者さんの生活や認知機能を客観的かつ十分に把握した上で、たとえば日常生活で洗面を忘れてしまう患者さんには、洗面所に「顔を洗いましょう」と貼り紙をするなど、手がかりを置いてあげる方法も有用です。

リハビリテーションを進めていく上で、もっとも重要なのは患者さんの動機づけです。いくら優れたプログラムを作っても、患者さんがその気にならなければ何もなりません。ですから患者さんが積極的に参加するために、その訓練による改善度を評価して患者さんに知ってもらうことが大切でしょう。
(中込和幸)

Wexler, B. E., Anderson, M., Fulbright, R. K. et al. : Preliminary evidence of improved verbal working memory performance and normalization of task-related frontal lobe activation in schizophrenia following congnitive exercises. Am. J. Psychiatry, 157 ; 1694-1697, 2000.