強迫性障害の悪循環の図

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ある状況で心配が頭をかすめること(侵入思考)は9割の人が体験しており、正常体験に属する(表)。侵入思考に対して、「まあ、大丈夫だろう」と日常的に対処できれば問題は生じない。
強迫性障害患者は侵入思考を過大に評価して過剰な不安を覚え(強迫観念)、不安を抑えるための儀式的行動(強迫行動)を行う。
強迫行為で一時的に不安が和らぐが、(1)不安を覚えると強迫行為を行わないと安心できなくなる、(2)当該テーマ(例:確認)への過敏さが強まり、さまざまな場面で不安が生じて悪循環に陥る。

治療法には、薬物療法と精神療法(認知行動療法など)がある。

 

 「侵入思考」というのは、ある事態に遭遇した際に誰でも抱きうる一過性の心配を言います。たとえば、外出してから「確かに鍵を閉めた、ガスの元栓を閉めたと思うけれど、どうだったかな?」と心配になるとか、公衆トイレを使う際に「ここを使って、汚れはしないかな?」と感じたりすることは、誰でも思い当たるところがあるでしょう。普通はこの種の心配にとらわれず受け流すことができますが、強迫性障害の患者さんは「侵入思考」を「過大評価」しがちです。「過大評価」によって強い不安が生じて、それを和らげるために強迫行為をしますが、それが病態を悪くします。強迫行為をしないと安心できなくなりますし、強迫行為をすることで「過大評価」がいっそう強まってしまうからです。

  実際にこの図を臨床の場で使用してみますと、「侵入思考」と「過大評価」という二つの術語が入ることで心理教育が行いやすくなると感じています。(原田先生より引用)