高機能自閉症 (HA)/アスペルガー症候群 とは

自閉症は症例が多彩であり、健常者から重度自閉症者までの間にははっきりとした壁はなく、その多様性・連続性を表した概念を自閉症スペクトラムや自閉症連続体などと呼ぶ。

知的障害を伴う場合が多いが、知的能力(一般的にIQで判断される)が低くない自閉症のことを高機能自閉症と呼ぶことがある。また、知的能力の優劣に関わらず、一部の分野で驚異的な能力を有する場合もあり、その驚異的な能力を有する者をサヴァン症候群と呼ぶ。 なお、「高機能自閉症」と「アスペルガー症候群」、「低機能自閉症」と「カナー症候群」は基本的には同じものであり、臨床的には区別されないことが多い。
(DSM-Ⅳ、ICD-10では言語障害がないものをアスペルガー症候群、言語障害があるものを自閉性障害、小児自閉症(カナー症候群)と分類する)

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高機能自閉症/アスペルガー症候群の定義と判断基準(試案)

1. 高機能自閉症の定義
高機能自閉症とは、3歳位までに現れ、他人との社会的関係の形成の困難さ、言葉の発達の遅れ、興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害である自閉症のうち、知的発達の遅れを伴わないものをいう。また、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。
※ 本定義は、DSM-IVを参考にした。

2. 高機能自閉症の判断基準
以下の基準に該当する場合は、教育的、心理学的、医学的な観点からの詳細な調査が必要である。

1. 知的発達の遅れが認められないこと。

2. 以下の項目に多く該当する。

○ 人への反応やかかわりの乏しさ、社会的関係形成の困難さ
目と目で見つめ合う、身振りなどの多彩な非言語的な行動が困難である。
同年齢の仲間関係をつくることが困難である。
楽しい気持ちを他人と共有することや気持ちでの交流が困難である。

【高機能自閉症における具体例】
友達と仲良くしたいという気持ちはあるけれど、友達関係をうまく築けない 。
友達のそばにはいるが、一人で遊んでいる。
球技やゲームをする時、仲間と協力してプレーすることが考えられない。
いろいろな事を話すが、その時の状況や相手の感情、立場を理解しない。
共感を得ることが難しい。
周りの人が困惑するようなことも、配慮しないで言ってしまう。

○ 言葉の発達の遅れ
話し言葉の遅れがあり、身振りなどにより補おうとしない。
他人と会話を開始し継続する能力に明らかな困難性がある。
常同的で反復的な言葉の使用または独特な言語がある。
その年齢に相応した、変化に富んだ自発的なごっこ遊びや社会性のある物まね遊びができない。

【高機能自閉症における具体例】
含みのある言葉の本当の意味が分からず、表面的に言葉通りに受けとめてしまうことがある。
会話の仕方が形式的であり、抑揚なく話したり、間合いが取れなかったりすることがある。

○ 興味や関心が狭く特定のものにこだわること
強いこだわりがあり、限定された興味だけに熱中する。
特定の習慣や手順にかたくなにこだわる。
反復的な変わった行動(例えば、手や指をぱたぱたさせるなど)をする。
物の一部に持続して熱中する。

【高機能自閉症における具体例】
みんなから、「○○博士」「○○教授」と思われている。(例:カレンダー博士)
他の子どもは興味がないようなことに興味があり、「自分だけの知識世界」を持っている。
空想の世界(ファンタジー)に遊ぶことがあり、現実との切り替えが難しい場合がある。
特定の分野の知識を蓄えているが、丸暗記であり、意味をきちんとは理解していない。
とても得意なことがある一方で、極端に苦手なものがある。
ある行動や考えに強くこだわることによって、簡単な日常の活動ができなくなることがある。
自分なりの独特な日課や手順があり、変更や変化を嫌がる。

○ その他の高機能自閉症における特徴
常識的な判断が難しいことがある。
動作やジェスチャーがぎこちない。

3. 社会生活や学校生活に不適応が認められること。
 
※ DSM-IV及び、スウェーデンで開発された高機能自閉症スペクトラムのスクリーニング質問紙ASSQを参考にした。
※ 定義、判断基準についての留意事項 
○ ADHDや高機能自閉症等は、医学の領域において研究、形成された概念である。教育的対応のための定義や判断基準は、現在ある医学的な操作的診断基準に準じて作成する必要がある。 
○ 判断基準は、都道府県教育委員会がその判断及び指導方法等について学校を支援するために設置することになろう専門家で構成された組織(以下、「専門家チーム」という)において活用することを想定した。  
○ 専門家チームでは、医療機関と連携して、必要に応じて医学的診断が受けられるようにしておく必要がある。