心の理論と言うと心理学全般の事を指し示すように思うだろうが
そうではなくて、ある特定の問題を指し示す言葉である。
何の問題かと言うと、他者の心の状態を類推する心の働きをいう。
心の理論なんていわないで、
他者心理類推論とでも言っておけばいいのだけれど、
なんとなくかっこいいというので、
そのままになったらしい。
その程度の未熟な話である。
サリーとアン課題という有名な課題があって、
これは検索するとすぐに出る。
実際すぐに出たので、ペーストしておくと、以下のようである。
サリーとアン課題
- サリーとアンが、部屋で一緒に遊んでいました。
- サリーはボールを、かごの中に入れて部屋を出て行きました。
- サリーがいない間に、アンがボールを別の箱の中に移しました。
- サリーが部屋に戻ってきました。
- 「サリーはボールを取り出そうと、最初にどこを探すでしょう?」と被験者に質問する。
正解は「かごの中」だが、心の理論の発達が遅れている場合は、「箱」と答える。
スマーティ課題
- 前もって被験者から見えない所で、お菓子の箱の中に鉛筆を入れておく。
- お菓子の箱を被験者に見せ、何が入っているか質問する。
- お菓子の箱を開けてみると、中には鉛筆が入っている。
- お菓子の箱を閉じる。
- 「この箱をAさん(この場にいない人)に見せたら、何が入っていると言うと思う?」と質問する。
正解は「お菓子」だが、心の理論の発達が遅れている場合は、「鉛筆」と答える。
多くの場合、4、5歳程度になると、この2問に正解できるようになるが、心の理論の発達が遅れていると、他者が自分とは違う見解を持っていることを想像するのが難しい為に、自分が知っている事実をそのまま答えてしまう。
心の理論の障害が想定される自閉症の子供は、高年齢になっても誤答する割合が高い。ただし、知的障害を伴う低機能自閉症の場合、質問の意味自体を理解できていない場合もある。
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簡単に言うと、
「その人の心になって、考えて感じてみる能力」であり、
その人はまだこのことは知らないのだから、こうするはずというような推理が出来るのが
心の理論が働いている状態である。
この部分が欠損していると、
上のような質問でおかしな結論を語る。
また、日常生活で、おかしな言動が起こる。
集団生活を送る上で役に立つ機能である。
他人の心が推理できて共感できるのは大変基本的な機能だからだ。
神経基盤について要素的に説明したがる学派と、
そんなことには興味のない学派があり、いろいろな意見がある。
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同じ会場で
メンタリゼーションについても議論されていた。
これもあとほんの少しでいいから限定的な形容詞を付けてくれるといいと思うけれど。
他者に心的状態を認めたり、その状態を推論したりすることをメンタライジングという。
心の理論と同じようなこと。
他者に心的状態を認めたり、というのは、おもに子供の発達心理学だから、このようないい方になる。
メンタライジングは、人が円滑な社会的生活を営む上で重要な能力となる。メンタライジングの萌芽は、乳児期初期の社会的知覚だと考えられる。すなわち、ヒトの持つ特有な刺激に対する選好に始まり、母子関係に代表される二項関係、さらに第三者もしくは対象物を含む三項関係の成立、そして他者の誤信念を理解する「心の理論」の成立へと続く。
というようなわけである。