課題 自我障害の説明モデルを作れ
条件
1.最小限の仮定であること(simple)。オッカム。
2.広汎に説明可能であること(pervasive)。
3.elegant4.beautiful
解答 時間遅延理論。smapg-time-delay-model ver2008.クリックで拡大。
11.と12.に時間遅延が生じるため、ある場合は能動感、ある場合はさせられ体験、幻聴、ほぼ同時に近いときが自生思考、などとなる。
説明
・特段奇異なものではなく、脳科学の常識に沿った意見だと思う。
・脳の内部に世界モデルをつくると言っているのは、たとえば小脳について、伊藤正男先生が言ったことと同じである。その実体がどこにあるのか、あるいは分散して存在しているのか、将来の課題である。伊藤先生の場合は小脳という実体が明確だった。
・進化の過程で脳は、外界の刺激に反応する回路であった。行動学でいうS-R理論。
・それについては図の下部、1.2.3.4.13というサーキットを考えれば充分である。
・世界モデル1と名づけておいたのは、自動機械(オートマトン)としての脳の部分である。
・自動機械も、内容としては階層構造になっていて、崩壊するときに呈する症状はジャクソニスムの原則に従う。
・世界モデル2についてはここで「自意識」と名づけているが、自我意識のことで、自己の内面を反省する意識である。
・自意識を発生させることで、人間は、実際に行動してみなくても、脳の内部でシュミレーションができるようになった。わざわざ血まみれになって命を落とさなくてもよくなった。他の生物ではDNAのセレクションというプロセスが、脳の中の仮説のセレクションになっているので、生存に非常に有利である。
・自意識は自意識それ自分自身を意識できるのが不思議でよく分からない。「「自分を考えている自分」を考えている自分」という具合にアクロバットもできる。何重にでもできる。鏡の中の鏡という図でよく解説されるのだが、なにかうまい解釈があるのだろう。どんな補助線を引けばいいのか、不明。
・たとえば、荻野恒一先生が本で述べていること。自意識は、何かに集中していれば、存在をはっきり感じられるが、集中がぼやけているときには、忘れるときもある。駅の改札口を考え事をしながら、定期券を出して通り過ぎ、あとで、そういえば、定期券を出したかなと思うことがある。そのとき人間は自動プログラムで動いている。
・またたとえば、スポーツ選手のインタビュー。見事なパフォーマンスをした後で、「なにも考えずに集中しました。自然に体が動きました。」という場合、自意識は背景に退き、自動機械部分で運動をし、状況判断したことになる。
・脳梗塞の後でぎこちなく歩行練習を始めるときは、自動機械と自意識が一緒になって、シンクロして世界を学習しているのだろう。その時期が過ぎれば自動機械だけで歩けるようになる。その時点で現実世界と世界モデル1.2は、歩行に充分なだけは一致している。
・伊藤先生の小脳モデルが原型である。自転車に初めて乗るとき、大脳が最大限に働く。こつを飲み込んだとき、小脳がすっかり学習している。それからあとは「無意識」のうちに自転車がうまく乗れるようになり、考え事をしていても進めるようになる。
・人間が歩くということもそのひとつである。歩き始めのときは約一歳だから自我意識はまだ充分に発達としてないが、大脳の工夫が、小脳に引き継がれるのだろう。リハビリではこの点が大切で、脳に障害があり、歩行困難になった場合、脳の再構築を考えるには、このような発達のプロセスをきちんと辿らないと、うまく行かないと考える。そのことを強調したのが、上田敏先生で、学生の夏休みの間、つきっきりで見学して教えていただいた。自動車で移動するのが好きで、助手席でよくお話を伺った。
・上田説は脳の階層的構築にしたがって、再構築せよということだと理解している。その後勉強してわたしなりにはジャクソニズムそのものと思うが、上田先生は、Eccles、伊藤の流れなのだとおっしゃっていた。
・階層説に従えば、自我意識は、進化のなかで最も遅く、人間になってようやく明確になった回路であり、自動機械回路の上に乗り、抑制的または促進的に支配し、場合によっては、その存在がなくなっても、存在には支障がない。呼吸器や循環器は自律神経系と脳幹部の働きで保持される。
・おおむね、トライアンドエラーを反復しているうちに微調整しつつ、、予言精度の高い世界モデルを形成していく。
・世界モデルの第一の「世界」は母親である。したがって、母親が人間の代表としてかなりずれている場合には、後に修正に苦労する。
頭の中で発生させた仮設を6.7.8とループさせることで、シミュレーションが成立する。
・内部自意識反応は9により自動機械に影響を与え、内部自動反応に影響し、外部反応に影響する、それが「外部世界」にどう作用し、結果はどうであるか、刺激を介して知り、世界モデル2を修正する。つまりその経路は、5.6.7.9.3.4.13.1.5のループになる。
病態について
1.ヤスパースのいう自我障害
1-1.自我の能動性の障害
時間遅延理論で説明できる。能動性については、図の11と12を比較して、11が早く到着していれば、能動感が生まれ、12が早く到着していれば、させられ体験が生じる。ほぼ同時だが12がわずかに早い場合には、自生体験として感じられる。このあたりはスペクトラム・連続体を形成する。
この点については11と12の時間の到着時間を比較した「時間遅延理論による能動性障害の説明」としてまとめている。
1-2.単一性の意識……これは多重人格について典型的である。これは、世界モデル2が複数個成立していて、場合によって、どれを優位にするか、あるいは、複数個の組み合わせのうち、どれとどれを優位にするか、選択し、自己意識しているものである。それが自動機械に影響を与えて、外見からみても、奇異な行動を取ることになる。
1-3.同一性の意識……これは時間的同一性についていうのだと思うが、コメントすべきことなし。
1.4.自他の区別……このモデル外。
2.
シュナイダーの一級症状:
1.思考化声、……自分の考えていることが声になって聞こえてしまう…図の10、かつ、11よりも12が早く到着
2.問答形式の幻聴、……自問自答が声になって聞こえるもの……図の10、かつ11よりも12が早く到着
3.行動について論評する幻聴、……自分の行為についてコメントする……図の10、かつ11よりも12が早く到着
4.身体的影響体験……どこかを触られるなど……身体感覚の違和感について、11よりも12が早く到着するので、被動感に通じる。
5.させられ感情……11よりも12が早く到着
6.させられ思考……11よりも12が早く到着
7.させられ行為……11よりも12が早く到着
8.被影響体験……11よりも12が早く到着
9.思考奪取……思考がぬき取られる……
10.思考伝播……11よりも12が早く到着すると、すでに相手に伝わってしまっているからだと感じる
11.妄想知覚……
- 妄想気分:周囲がなんとなく意味ありげで不気味と感じる。
- 妄想知覚:正常な知覚に特別な意味づけがなされる。
- 妄想表像:とんでもないイメージを抱く。
- 妄想覚性:途方もないことを察知するが実体には何も理解できていない。
これらの系列の症状である。
これらは、させられ体験といういわば「監獄」の中に閉じ込められていることによる拘禁反応といえるものだと思う。そのように解釈できないならば、すでに統合失調症性のレベルダウンが進行していると考えることもできる。
3.強迫性障害
自分ではばかばかしいと充分に承知していてやめたいのだが、やめられない。
この病態は、自意識と自動機械の連結が切れていることで説明できる。
行為しているのは自分に違いないが、自分はそうしたくないと思っている。
それは翻訳すれば、自動機械がやってしまうので、それを自意識は止めたいのだが、回路がつながっていない、ということになる。
4.状況意味失認
これは私見では二次的な意味しか持たない
5.初期統合失調症の特異的四主徴
5-1.自生体験……11よりも12が早く到着する
5-2.気付き亢進……フィルター障害のようなものとして説明されている……smapgの自我障害モデルでは説明できない。したがって、本質的に自我障害ではないだろうと考えられる。刺激のカットオフポイントがずれる。それは被動感の兆しに悩まされ、自信を喪失している状態ならば、考え易い。
5-3.漠とした被注察感……注察感は、結局、相手の目つきが問題なのではなくて、目つきに反応して不安が高まり、冷汗が出るという反応が起こり、その反応から逆算して、注察されていると結論しているに過ぎない。1.5.6.7.10.2.3.4.と進行しているはず。8のループにより、冷汗は注察のせいだと結論付ける。「見られている」といえば「被動感」のような感覚があるが区別すべきだろう。「自分が自分を注察していることを、漠然と、他人から見られているように思う気分」、とするならば、このモデルで説明できる。
5-4.緊迫困惑気分……11と12に関して時間遅延が起これば、緊迫して困惑もするだろう。
6.幻聴……何と言っても普遍的な症状。刺激に対してコメントするのであるが、11よりも12が早ければ、させられ体験になり、幻聴になる。
幻聴にも、実際に誰か人のささやきが聞こえる幻聴もあり、
一方では、人がわたしに向かってささやいているという妄想をいだき、聞こえている、命令されていると表現する場合がある。
実際に誰かのささやきが聞こえるタイプは、自分の内部の声を他人の声として聞いているものであって、構造としてはさせられ体験と同様である。内部の声が出るという運動において11よりも12が早ければさせられ体験になり、幻聴となる。
人がわたしにささやいているという妄想については、このモデルでは説明できない。
したがって幻聴の一部はさせられ体験と同じ構造であり、時間遅延モデルで説明できるといえる。
7.離人症……自分については、主体が不確実になり、世界については、もののものらしさが失われる。一部分は能動性の消失で説明できるだろう。しかし被動感まではいかない。ものものもらしさについては、人間の側でものについて予測し、その予測がよく当たっていれば、人間はもののものらしさとしてとらえることができる。しかし一瞬ごとの予測が外れてしまうとき、ものの実感が失われ、離人感が生じる。世界を予測するのは世界モデルである。世界モデルが現実とずれているとき、離人感が発生する。シュミレーションの失敗例である。しかしズレは微弱で、妄想的というほどではない。ところが体験している個人の困難は強く、顕著に疲労する。
もう一つのタイプとしては、自動機械と自意識が切れているとき、離人体験が発生する。自分がやっているのはたしかなのだが、能動性もないし喜びもない。それが困った反復行為になれば強迫性障害だが、迷惑にならない程度の行為の場合には離人症という悩み方になる。
8.背景思考の聴覚化……10.の経路
9.自己モニタリング……6.7.8.のループ。自己モニタリングができないと、他者の行動や感情の推定ができないなる。これはシミュレーション機能の欠損になる。自閉症スペクトラムで顕著に見られる。自己モニタリングができないと、世界モデルの訂正ができない。あるいは、自己モニタリングはできるのに、世界モデルが現実世界と大きく異なってしまっている場合がある。しかしこの場合には、訂正可能の余地がある。
10.自動筆記……世界1と世界2がかなり一致しているときには、自意識を「止める」形にしたほうが、余計な緊張がなくてうまく行くだろう。運動選手でも、芸術家でも、学問をする人でも、経験があるだろう。
11.うつ……このモデルでうつは説明しないが、回路の不全による一般的な疲弊の結果としてうつは発生する。
12.解離……この言葉で一番考え易いのは、自意識と自動機械の解離である。これは意識障害の病理とも関係している。しかしまた、複数の自意識の解離が考えられ、むしろこちらのほうがいわゆる解離性障害として問題になる。
13.統合失調症の場合、世界モデルを訂正しにくい理由……なぜなら、それは思い違いではなく、訂正しようもなく、時間遅延は生じているのであり、被動感は生じ、その延長で被害感が生じ、同じ構造で幻聴が生じる。その場合に、人間は自分の感覚を否定しようがないし、解釈しなおすことも難しい。……しかしながら、以上のような理屈を説明し、概略、機械論的に以上のプロセスが生じていて、不愉快さの一部は二次的なものであると納得できれば、対処は楽になるのではないだろうか。そう期待を込めつつ思う。
平たく言えば、自分の考えが聞こえているのだということになる。なぜか。それは、11.と12.がほぼ同時に、しかし11.が一瞬早く到着すれば、能動感が生じ、一瞬遅れれば、それは幻聴になり、させられ体験になる。
そのことを内的に合理的に説明しようとして必死になり、妄想を発展させる。しかし上のからくりを知っていれば、妄想を発展させる必要は無い。
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このようにして述べてくれば、
1.世界モデルはいかにして修正されるか、修正されないか。
世界モデルが粗雑過ぎるとき適応障害を呈し、
世界モデルが修正不可能であるとき、妄想性であると名づけている。
2.線で引いた各所で混乱と錯誤の可能性があり、それぞれは、自我障害の一種と見られる。
特に、11.と12.の時間遅延によってさせられ体験、自生体験、能動感などの現象が連続体として生じると考えられる。
3.世界モデルは生成されつつあるものであるが、最初の人間の脳に、先天的に与えられた「原初の世界モデル」があるだろう。人間とは、世界とはについての、原初のモデル。これこそ「コンセプト」というべきものだ。そこからどのように成長していくかを見れば、人間場合、外界とはまず第一に他人である。他人の第一は母親である。したがって、母親を通してモデルを形成することになる。
核家族化の進行する現代で、母親の機能不全が子供に世界モデルの機能不全をもたらすのは好ましくない。したがって、大家族育児または共同育児が勧められる。
世界モデル1.2と現実世界を比較検討して訂正すれば、
それが現実検討というもので大切なのだが、
多分、直接比較はできなくて、あくまで、S-Rの連鎖を辿るしかないだろうと思う。
その束として、世界モデルができるだろう。
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こんなタイプのモデルとしては、
Shared representation の病的拡大
Forward model の障害仮説
Self monitoring の障害仮説
などがある。
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このようなモデルであれこれ議論して時間がたつうちに、
リベットの実験が登場、主著は「マインド・タイム 脳と意識の時間」など。
わたしのモデルとは関係があるようで、少し違う気もする。
関連書物もいろいろあり、
たとえば、
深尾憲二朗: 自己・意図・意識- ベンジャミン・リベットの実験と理論をめぐって. 中村雄二郎,木村敏編: 講座生命7. 河合文化教育研究所、など。
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さて、simpleだったかといえばsimpleだと思う。動物脳の上に自意識を乗せただけだから。
pervasiveかといえば、どうだろう。させられ体験、幻聴、被害妄想、自生思考、を説明できる。全部ではない。むしろ区別が必要だ。
患者さんに理解できるだろうか。多分、できると思う。
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たとえば何かの刺激に対して自動的に動くときも、まったく同じことを自意識も考えて出力しているので能動感が保持される。
ボールが飛んできたからとっさによけたという場合でも、一瞬、自意識のほうが早く届いている。あるいは、リベット流にいえば、自意識の方が早いと錯覚するように回路が組まれている。
なぜなら、まず、視覚、聴覚、触覚その他、人間の感覚が脳で統合されるまでの時間はぴったり同じはずがない。「同時である」とみなす時間調整係がいるはずである。その時間調整係がうまく働かず、自意識からの情報を遅延して受け入れていたら、能動性の障害になり、それがさせられ体験、幻聴、被害妄想、自生思考までの一連のものを説明する。
簡単版はこちら。
患者さんに説明するには
簡単版でいいかもしれない。
最初の図で、こうしなかったのは、
比較照合の部分が世界観の訂正には根本的に重要で、
その情報は自意識に帰ってくるべきだからである。
現実と世界モデルの比較照合と訂正については
さんざん議論があり、
やはりその点をモデルの中に組み込むのがいいと思う。
しかし暫定的に分かり易くいうなら、
上の図で充分だ。
自動機械は自動機械で世界モデルを形成し、
自意識は自意識で世界モデルを形成する。
出力したものが大きく違えば訂正を要するし、
時間的に自意識側からの情報が遅れると、
自我障害が発生する。
こんな風に簡便に説明できるだろう。
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薬理
D2ブロッカーが12.に効いてくれれば、自我障害はとりあえず落ち着くだろう。でもそれは11.を促進するものではないので、根本的な解決ではない。
アンフェタミンは11.を直接促進するのだろう。しかし使い続けなければ、11.が遅延するようになる。
そして発病する。
理想的な薬理としては、11.を促進し、12.をややブロックしたい。
その点では、
中脳辺縁系のドーパミン(D2)を遮断して陽性症状を改善するというのが12.の経路、
中脳皮質系のセロトニンを遮断して、中脳皮質系のドーパミン(D2)が出やすくなるというのが11.の経路であれば
話のつじつまは合う。
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精神療法
精神療法家としては、薬剤によって、世界モデルの改変がしやすくなることがあれば好都合である。妄想へのアプローチができる。D2ブロッカーでは世界モデルの変更はできない。もちろん、時間遅延を一時的にブロックしてくれれば落ち着くし、落ち着いていれば、言葉も浸透する。
女性ホルモンは多分、そのように効くはずではないかと推定しているが、もちろんそんな目的のためには使えない。
しかし女性ホルモンがたくさん出ているとき、
外界への適応が容易なのであり、だから若い頃のいろいろな試練にも柔軟に対応できるのだと思う。
人生の始まり、赤ん坊の頃には母親由来の女性ホルモンがたくさんあって、環境に対してかなり柔軟に開かれているのではないかと思う。
このあたりは、人生における何度もない、強い学習の成立と関係している。
言語習得に臨界期があったり、それぞれの課題について、臨界期があり、
一定期間開かれて、時期が過ぎれば閉じてしまうようだ。
閉じてしまうから安定しているはずなのに、
女性ホルモンが増えるから、環境に対して開かれて、それはいいことでもあるが不安定要因にもなるだろう。
強迫性障害やパニック障害は、起こらないはずの強い学習が起こり、始まるとも考えられる。強い学習回路は閉じられているはずであるが、ホルモンなどの影響で開いてしまうのだろう。そこに偶然刺激が加われば、学習してしまう。
男性ホルモンはどう働いているのかよく実感がつかめない。
世界観が変更し易い脳の状態を薬剤で整えて、その上で、精神療法を施行したい。
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11.と12.の到着時間が問題で、それぞれに薬剤を聞かせればいいことが分かる。
コントミンやセレネースは、多分、両方をブロックしてしまう。
もうひとつ、病理として、世界モデルのズレがあり、それは、モニター機能の弱さ、外部現実の貧困、訂正機能の弱さなど、いろいろに考えられる。
たとえば風景構成法で、風景を書いてもらうが、書いた後で、「へたくそだな」「こんなに思ったとおりに書けないなんて意外だ」といった感想をきく。
書く部分と鑑賞する部分はあまり密接につながっていないらしい。
つまり、出力してから、やっと視覚入力して、「まずい」と分かるような次第で、
私はこれが不思議だ。
下手だと分かっているなら、そしてピカソがうまいとわかっているなら、
鉛筆の線を1ミリずつ動かしていくだけで理想の線にたどり着けそうなものだ。
しかし現実はそうではない。
鑑賞眼があるということと、描けるということとは、別のことだ。
別のことというのは、脳の別々の部分が活動しているということで、
鑑賞部分が運動部分にダイレクトにつながってモニターできれば、
ある種の芸術家だろう。
しかし大半の芸術家は慎重にモニターしているのではなく、
我を忘れて夢中で書いて、結果がいいということだろう。
だから多分やはり鑑賞部分と運動部分は切れているのだと思う。
こうした、出力部分と入力部分が近くにあって相互に干渉し合うような脳の状態にすれば、
ある種の学習ははかどるだろう。
ステロイドホルモンなどはそのような働きをしているのかもしれないと思う。
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精神療法のターゲットは世界モデルの改善にある。
世界モデルの大半の成分は人間モデルであるから、
精神療法家が一人の人間モデルとして関わることはできる。
治療関係はモデルとして好都合である。
軽度の依存や尊敬の関係も治療に活用できる。
対人関係で学びそこなったことを
ゆっくり補充して訂正して行けばいい。
時間遅延の事情については、薬剤の活用だと思う。
不安性障害で強い学習が起こって回路が固定してしまった場合、
再度それを開いて脱学習するイメージである。
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上で述べている、幻聴、させられ体験、能動感、被動感、自生思考、強迫性障害、など、いずれも、当面の定義はあるものの、その定義の中に成因論として雑多なものを含んでいる可能性がある。むしろ、このモデルで説明できるものを検討して、幻聴やさせられ体験について、成因と現象の分類純化を進めることが大切だろう。いろいろな幻聴が可能である。
続きはこちら
http://shinbashi-ssn.blog.so-net.ne.jp/2008-05-09-1
また
http://shinbashi-ssn.blog.so-net.ne.jp/2008-05-06-11
http://shinbashi-ssn.blog.so-net.ne.jp/2008-05-06-4
を参照。