このグラフであまりにも明確に異常があって、
それはH12年、黄色の線の、男性50代をピークにした山だ。
これは歴史の中でも異常な山である。
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平成10年の自殺死亡率の急増について様々な経済学的、社会学的要因との関連について解析を行った「自殺の経済社会的要因に関する調査研究報告書」(平成18年3月京都大学)を紹介する。
①長期失業等を含む失業要因は、統計的に安定して有意に自殺死亡率を増加させる方向に作用しており、かつ寄与度も大きい。
②平成10年以降の30歳代後半~ 60歳代前半の男性自殺死亡率の急増に最も影響力のあった要因は、失業あるいは失業率の増加に代表される雇用・経済環境の悪化である可能性が高い。
③平成9年から10年にかけて、経営状態の悪くなった金融機関による「貸し渋り・貸し剥し」が多くの中小零細企業の破綻の引き金になったことが自営者の自殺の増加に大きく影響していると見られる。
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つまり、失業が一つの要因で、もう一つの要因は自営者の自殺という分析である。
長期でみると、自殺者統計はこんな感じ。
最近急増して、3万人が続いていることが分かる。
男女別で見ると
98年から男性が急増しているのが分かる。
失業と自殺について長期でみると
おおむね重なるが、
失業率では説明できない、自殺率の急増があることが分かる。
やはり1998年に失業率では説明できない、自殺急増がある。
これを京都大学レポートは平成10年つまり1998年について
経営状態の悪くなった金融機関による「貸し渋り・貸し剥し」が多くの中小零細企業の破綻の引き金になったことが自営者の自殺の増加に大きく影響していると
指摘している。
景気、失業者、自殺者の実数ではなく変動を抜き出すと次のようになる。
一時回帰線からの乖離幅の推移というもので、解釈が難しいが、
1998-2001にかけて、
あるいは1993年からすでに、自殺者数と、実質GDP・失業者数との動向の違いが見られる。
つまり、実質GDP・失業者数は1991年から後、合い伴って悪化している。
自殺者数は、1996年くらいまで、バブル後の不況にもかかわらず、そんなに悪化しなかった。
ところが1998年に急激な悪化を示し、2001年まで実質GDP・失業者数と異なった動向を見せる。
この点が自営業者の自殺だろうと見られている。
97年秋の三洋証券からはじまる、北海道拓殖銀行、山一証券と立て続けの大型金融破綻事件。アジア通貨危機。98年末には日本長期信用銀行と日本債券信用銀行が国有化。金融機関は主に中小零細業者に対して「貸し渋り・貸し剥し」をして、結果とて、1997年から98年にかけて、50歳代前後の中高年の自殺が急増したとみられている。無論、自営業者だけでなく、そこで働いていた従業員も、そしてそれぞれの家族も、自殺したのだと思う。
98年といえば、97年Win97、98年Win98と続き、アジア通貨危機とアメリカ・英語圏の経済逆襲が始まった時期である。
解説はとにかく、最初のグラフの、黄色い富士山のような山が、つらい。