「のどがあぶられる」とき漢方薬

中国の古典に「のどが炙られる」とき、女性は半夏厚朴湯と書かれている。
いまで言えば、のどのあたりの違和感とか、呼吸のしにくさとか、
不安性障害やパニック障害でよく見られる症状で、
女性の場合、半夏厚朴湯を実際によく用いるし、
効果がある。
男性の場合は、比較検討してみて、半夏厚朴湯よりも柴胡加竜骨牡蛎湯がよいという報告があり、
それももっともだと思う。実際そのように感じる。半夏厚朴湯も充分に効果的である。

さてその場合、男性女性、不安、パニック、そのようなことがキーワードなのではないと思う。
もっとその奥にある「体質」または「性質」について処方しているのであって、
たとえば、XYであっても、女性的な体質や感受性の人はいるものだし、
XXであっても、男性的な人はいるし、
人生の時期によっても、それぞれ異なるようで、
さらに性格傾向や生育歴やそのときの環境にもよる。
どちらかといえば、外来のみのクリニックでは半夏厚朴湯の使用頻度が高く、
病院外来では柴胡加竜骨牡蛎湯の使用頻度が高かったように思う。

また、いくつかある柴胡剤を選択し、少量のみ用いる方法、西洋薬と組み合わせる方法があり、
工夫の甲斐のある分野である。

新橋、霞ヶ関あたりのサラリーマンのうつにはどちらかといえば補剤が必要で、
体質、性格、状況にあわせて、
補中益気湯、十全大補湯などを少量のみ用いる。

ロート製薬は不眠、精神不安に対しての汎用処方として、
柴胡加竜骨牡蛎湯を大衆薬として売り出した。
理由のあることである。
ロート製薬は同時に防風通聖散を大衆薬として販売していて、
現代の状況に合致した処方選択である。

専門的には冷えやのぼせはあるか、消化機能はどうか、感情の状態はどうか、性格傾向はどうか、このあたりを総合して判断する。
舌診や腹部触診、脈診が有用である。

治療のターゲットをどこに定めるかで、処方も異なる。そのあたりはまことに微妙である。
流行のQOLやアドヒアランスと関係するところだ。