一年前の話ですが、収録。
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ゼチーア:新機序の高脂血症治療薬が日本上陸へ
2007年4月18日、高脂血症治療薬のエゼチミブ(商品名:ゼチーア錠10mg)が製造承認を取得した。高脂血症の薬物治療では、HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬剤)やフィブラート系薬剤が主流となっているが、エゼチミブはこれら既存薬とは異なる作用機序を持つ薬剤であり、わが国の高脂血症治療に新たな選択肢が登場する。
高脂血症の1つである高コレステロール血症の治療では、生体内でのコレステロールの生合成を阻害するか、食事などからのコレステロールの吸収を阻害することが基本となる。現在の高コレステロール治療の主流であるスタチン系薬は、主に肝臓でのコレステロールの生合成を阻害する薬剤であるが、これに対し、今回承認されたエゼチミブは、小腸からのコレステロールの吸収を阻害することで高コレステロール血症を改善する。具体的には、小腸からのコレステロール吸収に関与する「小腸コレステロールトランスポーター」を阻害する作用を有する。
エゼチミブの標的であるこのトランスポーターは、小腸壁におけるコレステロール輸送機能を担っており、小腸上部の刷上縁膜上に存在する。同薬は、これを阻害することで、胆汁性および食事性コレステロールの吸収を54%低下させる。また、欧米でのデータでは、作用機序の異なるスタチン系薬剤との併用により、スタチン系薬剤単独投与では十分な効果を示さなかった症例においても、相加効果として有意なコレステロール低下(LDLコレステロール低下)効果が認められている。
このほかにも、(1)高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症のほかに、既存の経口薬にはない「ホモ接合体性シトステロール血症」の適応を有している、(2)エゼチミブは腸肝循環し小腸局所で長時間作用するため、1日1回投与が可能。錠剤も小さく、良好なコンプライアンスが期待できる、(3)主要代謝経路はグルクロン酸抱合であり、生体内で肝薬物代謝酵素チトクロームP450が関与する代謝を受けないため、薬物相互作用が少ない――といった特徴がある。エゼチミブは、2002年に米国で発売されて以来、現在までに世界90カ国以上で承認され、既に1000万人以上の患者に使用されている。
今後、エゼチミブは、高脂血症の薬物治療における新しい選択肢として、わが国でも広く使用されていくものと考えられるが、これまでにない新しい作用機序を持つ薬剤でもあり、使用に際しては、副作用などについて十分な注意を払う必要があるだろう。
国内臨床試験における副作用発現率は18.8%で、主なものとしては便秘、発疹、下痢、腹痛、腹部膨満感、悪心・嘔吐であった。臨床検査値異常は12.1%に認められ、γ-GTP上昇、CK上昇、ALT上昇などが報告されている。また重大な副作用としては、アナフィラキシー、血管神経性浮腫、発疹を含む過敏症、横紋筋融解症、ミオパシーの報告がある。これらのうち、横紋筋融解症の発症した症例は、ほとんどがエゼチミブ投与前にスタチン系薬が投与されていた。なお現時点では、フィブラート系薬との併用に関しては、有効性及び安全性が十分に確認されていないとの理由から、避けることが望ましいとされている。