こころとからだの相談室:うつと躁うつ病は具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

こころとからだの相談室:うつと躁うつ病は具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

 ◇質問

 抗うつ薬(トフラニール)を飲みはじめて2年になります。1年前にとても良い状態になったので薬を減らしましたが、その反動のように強い落ち込みがきて、また薬を増やして現在に至っています(4錠)。躁うつ病は、躁とうつを繰り返すそうですが、周期のやたら長いもの、躁が目立たないものもあるとききました。自分の1年前の明るい軽い気分は、躁の状態だったのかもしれないと思ったりします。うつの波と躁うつの波の区別は自分でわかるものでしょうか。うつと躁うつで薬は違いますか。(53歳/男性)

 ◇回答

 躁うつ病にもいくつかのタイプがあります。最も重症とされる双極I型障害の場合は、抑うつと激しい躁状態が交互に現れます。それより軽度の双極II型障害の場合は、短期間の抑うつと軽躁状態が交互に現れます。たとえば秋と冬の時期は抑うつ、春と夏の時期は躁状態になるなど、季節によって抑うつと躁状態が切り替わるケースもよくあります。ご質問の方のケースは双極II型障害ではないかと推察いたします。ただ、調子が良くなった原因が抗うつ薬の効果であるか、気分変調自体であるかの断定はできません。

 躁うつ病の診断は、特徴的な症状のパターンに基づいて行います。適切な治療を行うため、医師は患者がその時点で抑うつまたは躁状態の最中であるかどうかを判断します。躁うつ病ではおよそ3人に1人の割合で、躁(または軽躁状態)と抑うつの症状を同時に発症することがあり、混合性エピソードと呼ばれます。

 抗うつ薬を服用すると、抑うつから軽躁状態や躁状態へ急転したり、場合によっては抑うつと躁状態を短いサイクルで繰り返したりすることもあります。そのため、抗うつ薬は短期間に限って使用し、気分に与える効果を慎重に観察する必要があります。軽躁状態や躁状態への移行をうかがわせる徴候がみられれば、ただちに抗うつ薬を中止します。躁うつ病の人が抗うつ薬による治療を受けているときには、リチウムなどの気分安定薬や抗けいれん薬を使用するのが良い方法です。

 リチウムは正常な気分の人には何も作用しませんが、躁うつ病の人が服用すると、約70%の人で気分の変調傾向を抑える働きをします。

 突然の躁状態の治療には、比較的副作用の危険が少ないリスペリドン、クエチアピン、オランザピン(いずれも非定型抗精神病薬)が使用されるケースが増えています。躁病にはこのほか、カルバマゼピンやバルプロ酸などの抗けいれん薬もよく使われます。

 双極性感情障害の方の場合、抑うつ気分を自覚することは比較的容易かもしれませんが、気分が躁状態になった際に、それが精神症状であることを自覚することは困難です。

 躁状態になってしまうと自身は快適であっても周囲に迷惑をかけることが多く、時には社会的信用を失うことすらあります。同時に躁状態となってしまった時点で治療を開始することは非常に困難を極めます。

 そのため、自身が双極性感情障害であることを自覚し、日頃から信頼できるメンタルの専門医をかかりつけの主治医として持ち、定期的に診察を受けることで、常に早め早めにその精神状態の変化に対応することで適切な治療を受けることがなにより大切です。

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気分安定薬として、
バルプロ酸=デパケン
リーマス
カルバマゼピン=テグレトールなど、
従来はてんかんの薬だったものが用いられます。
作用の仕組みは完全にはわかっていませんが、
経験的に、効果があることは知られています。
躁状態のときも、あがりすぎることなく、
うつ状態のときも、下がりすぎることなく、
波を圧縮させ、安定させる効果があります。

リーマスは抗そう薬と紹介されていることもあり、
自分はうつなのにリーマスを使うのかと、不審に思うことがあるかもしれません。
でも、うつの人にも有効です。

また、そううつのある人に、
リーマスと抗うつ剤を同時に用いることがあります。
これは、あがり過ぎないように、リーマスで抑え、
下がり過ぎないように抗うつ剤で支えているわけです。

こまのようにして長期の安定をはかるのが、
患者さんにとって利益のあることだと思います。

その場を切り抜けて、
その後また再発というのでは、いい治療とはいえません。

ラピッドサイクラーの原因が何であるか、
よくわかっていませんが、これも、慎重に対処していきましょう。