統合失調症については、
いろいろな治療法があるのだが、
やはり薬物療法が治療の柱となる。
特に初期には、薬剤の効果も期待できるし、
その後の再発の防止も期待できるので、
初期の治療が特に大切である。
正直言って、昔の薬は、副作用がきつかった。
代表的な薬としては、
ハロペリドール=セレネース、リントン、ハロステン
クロルプロマジン=コントミン、ウィンタミン
などがあり、効き目は確かであり、今もよく使う。
この薬でなければならないというタイプの人もいて、
有用な薬である。
データの蓄積があるので、その点もかなり有利である。
しかし人によっては、副作用が少しきつい。
副作用止めもいろいろある。
いろいろな世代を経て、
10年位前に、
リスペリドン=リスパダール
が登場して、効果はかなりよくなり、副作用はかなり軽くなった。
しかし初期治療に関して言えば、やはり副作用は軽くなく、
根気よく説明をする必要がある。
昔からの薬で、
スルピリド=ドグマチール、ベタマック、アビリット
があり、これは大変に有用である。
しかし副作用の点で、
女性で月経不順、乳汁漏出などがあり、
男性で、まれであるが、女性化乳房が見られる。
これはドーパミン系に作用しているということで、
副作用というよりは、当然現れる作用と解釈すべきだが、
それでも、女性の場合は気にする人が多い。
男性の場合の副作用は、とくに問題ないことも多いので、
初期治療に適している。
また、女性の場合も、スルピリドでなければならない人もいて、
その場合には、副作用を抑えながら、または納得してもらいながら、工夫して使う。
考えてみれば、月経のことなんか言っていられないくらい、
統合失調症の破壊力はすさまじいものなのだ。
新しい薬としては、
ジプレキサ、セロクエルがある。
これは大変有効な薬で、かなり進歩したと思う。
副作用はかなり少ない。
しかし糖代謝に影響があり、糖尿病の発生または悪化の可能性がある。
体重増加や食欲増加に関係があるか、慎重に
検討しなくてはならない。
糖尿病の専門医の中には、
「向精神薬は必要なのならしっかり使ってもらいたい、その上で、
血糖値の保持に関しては任せてほしい」
という頼もしい意見もあるが、
どこの先生もそのように協力できる専門医がいるとは限らない。
ルーランは効き目も穏やかだが、副作用もマイルドで、使いやすい。
二次代謝産物として、クロザピンと類似の効果の物質となることも知られていて、
有用である。
エビリファイは、ドーパミンを安定化させる薬で、
画期的といえる。初期統合失調症に対して、どのような効果が出るのか、
臨床経験を蓄積しつつあるところである。
今のところ、かなり有望と考えられる。
4月発売の新薬であるロナセンは、
解説によれば、錐体外路症状の発現率は低く、
体重増加や高プロラクチン血症等の副作用も少ない、
統合失調症の陽性症状(幻覚、妄想など)にも、
陰性症状(情動の平板化、意欲低下など)にも効くということだ。
ドーパミン-2 受容体およびセロトニン-2 受容体に対して強い遮断作用と高い選択性があり、
セロトニン-2 受容体よりドーパミン-2 受容体に対する遮断作用が強い。
最近は新規薬剤の認可について、
かなりはっきりと先行薬に対して優位性がないと認可されないので、
たぶん、かなり有用ではないかと期待する。
まとめて言えば、
古い薬は、効き目は確実だが、副作用が困る。
新しい薬は、ドーパミンだけでなく、セロトニンに効くので、使いやすいが、
特有の副作用もあり、注意が必要である。
スルピリドは特異な薬で、有用だが、注意が必要。
さらに新しい薬、エビリファイとロナセンについては、大変注目。
そのほかに、
ベンゾジアゼピン系抗不安薬で経過を少しだけ見守る方法もある。
GABA系に作用する薬なのだが、
統合失調症の結果としての不安をよく抑えてくれるし、
睡眠リズムを取り戻すのにも役立つ。
いったん落ち着いてから、少量のエビリファイを始めてもよいと思う。
また、漢方薬を使うこともできる。
柴胡加竜骨牡蛎湯、
柴胡桂枝乾姜湯、
などが代表である。
女性の場合には、
当帰芍薬散、
桂枝茯苓丸、
加味逍遥散、
加味帰脾湯、
で始めるのも方法である。
証に応じて用いる。
開始してしばらくしてから、
ドーパミン系とセロトニン系のコントロールを始めてもよい。
茯苓丸
加味逍遥散
加味帰脾湯桂枝茯苓丸桂枝茯苓丸
桂枝茯苓丸
加味逍遥散
加味帰脾湯