躁うつ病の治療に用いるリチウムのターゲットが明らかになった
Science
24時間周期のサーカディアンリズムはすべての生物にそなわり,哺乳類では多くの行動や身体的機能に関する制御因子である。
この異常はがんや精神病など多くの病気を引きおこし,とくに双極性障害(躁うつ病)とは深くかかわっている。
双極性障害の治療に一般的に用いられているリチウムは,グリコーゲン合成酵素リン酸化酵素(GSK3)の阻害剤で,
GSK3はいくつかの生物種でサーカディアンリズムを制御している。
中心時計は視床下部の視交叉上核に存在し,さまざまな時計遺伝子の互いに関連した転写フィードバックによってサーカディアンリズムがつくられ,維持される。
アメリカ,ペンシルバニア大学のイン博士らは培養細胞を用いた実験で,概日時計の負のフィードバックに必要な核内レセプター「Rev-erbα」が,GSK3βによってリン酸化されることで安定化することを発見した。細胞にリチウムを投与すると,Rev-erbαは急速にプロテアソーム分解されてその量とはたらきが失われ,Bmal1とよばれる時計遺伝子が活性化された。
リチウムに反応しないタイプのRev-erbαは,概日遺伝子の発現を抑制した。
すなわち,Rev-erbαタンパクの安定性をコントロールすることが体内時計にとって重要であり,リチウム療法のターゲットであることが明らかになったと博士らはのべている。
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