双極性障害ミトコンドリア機能障害仮説

理化学研究所 加藤忠史先生の画期的な説

ミトコンドリア機能障害仮説は,双極性障害患者において,磁気共鳴スペクトロスコピーにより脳エネルギー代謝異常がみられること,ミトコンドリア病と気分障害の合併,双極性障害患者の死後脳でミトコンドリア遺伝子(mtDNA)欠失が増加していたことなどに基づいている(Kato T, et al. 2001)(図1)。この仮説では,mtDNA の変異や多型に基づくミトコンドリア機能障害により,細胞内Ca2+ シグナリングに変化を来たし,神経可塑性の障害を引き起こしていると考えられた。米国ではKonradi ら(2004)の双極性障害患者の死後脳におけるミトコンドリア関連遺伝子の発現低下の報告を契機としてこの仮説が認知され,ミトコンドリア病の治療薬としてFDA が承認したtriacetyluridineの双極性うつ病に対する臨床試験が行われている。


これが科学の本道だ。