まず記事の紹介。
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仕事のストレス(Job strain)と急性冠動脈心疾患再発イベントのリスク
仕事のストレス(job strain)が、心筋梗塞の2次予防にも重要であることを示す前向き研究のエビデンスが発表された。 これまでにも、仕事のストレスは、冠動脈心疾患の初回発症のリスクを増加させることはすでに報告されているが、すでに一度心筋梗塞を発症した患者の再発のリスクを増加させるかどうかについてのエビデンスはなかった。
本研究は、急性心筋梗塞を初回発症後、仕事に復帰した972名(年齢35歳~59歳)において、その予後を1996年2月10日より2005年6月22日まで追跡した前向き研究である。 追跡研究開始前(平均的には仕事へ復帰後6週目)、および開始後2年目と6年目に聞き取り調査を実施し、仕事のストレスは、精神的職務要求度と自由裁量度により、次の4区分、すなわち、high strain(高要求度、低自由裁量度)、active (高要求度、高自由裁量度)、passive (低要求度、低自由裁量度)、およびlow strain(低要求度、高自由裁量度)、に分け評価した。 複合評価エンドポイント(致死的冠動脈心疾患(CHD)、非致死的心筋梗塞、および不安定狭心症)は206例に発生し、以下の結果が得られた。
1)仕事のストレスは、追跡調査開始から2.2年目以降の後期調査期間のCHD再発と関連している (ハザード比:2.20; 95%信頼区間:1.32-3.66)。
2)慢性的な仕事のストレスに曝されている患者と曝されていない患者のイベント発生率は100 人・年あたりそれぞれ6.18と2.18であった。
3)通常の心血管リスク因子を含む26の関連因子で補正しても、慢性的な仕事のストレスはCHD再発の独立予測因子として残った(ハザード比:2.00; 95%信頼区間:1.08~3.72)。
本研究で使用されたKarasekのJob Strain Modelは、古くから仕事のストレスの評価指標として使用されている。本モデルでは、仕事のストレス度を、要求度と裁量権の2つの機軸で評価している。これまでの研究では、要求度が高く、裁量権が少ないHigh strain群で、冠動脈疾患の初回発症が増加していることが示されている。今回の研究の新規性は、一度、心筋梗塞を発症した患者の再発にも、仕事のストレスが影響を与えることを明確に示した点である。
また、仕事への復帰2.2年以降の再発に仕事のストレスが、心血管イベント再発のリスクとなっている。本研究対象者では、2次予防薬として、抗血小板療法を90%以上、β遮断薬を70%以上、スタチンを50%以上に投与されている。このような状況においても、さらに、仕事のストレスが2倍程度も再発リスクを増加させていることは、注目に値する。
今後、心筋梗塞後の2次予防には、抗血小板療法、β遮断薬、スタチン、左室機能低下例にはレニンアンジオテンシン系抑制薬を投与し、仕事のストレスにも気をつけるように指導するべきであろう。
(自治医科大学 循環器科 教授 苅尾七臣)
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Job strain and risk of acute recurrent coronary heart disease events.
Unité de Recherché en Santé des Populations, Université Laval, Québec, Canada.
CONTEXT: There is evidence that job strain increases the risk of a first coronary heart disease (CHD) event. However, little is known about its association with the risk of recurrent CHD events after a first myocardial infarction (MI). OBJECTIVE: To determine whether job strain increases the risk of recurrent CHD events. DESIGN, SETTING, AND PATIENTS: Prospective cohort study of 972 men and women aged 35 to 59 years who returned to work after a first MI and were then followed up between February 10, 1996, and June 22, 2005. Patients were interviewed at baseline (on average, 6 weeks after their return to work), then after 2 and 6 years subsequently. Job strain, a combination of high psychological demands and low decision latitude, was evaluated in 4 quadrants: high strain (high demands and low latitude), active (high demands and high latitude), passive (low demands and low latitude), and low strain. A chronic job strain variable was constructed based on the first 2 interviews, and patients were divided into those exposed to high strain at both interviews and those unexposed to high strain at 1 or both interviews. The survival analyses were presented separately for 2 periods: before 2.2 years and at 2.2 years and beyond. MAIN OUTCOME MEASURE: The outcome was a composite of fatal CHD, nonfatal MI, and unstable angina. RESULTS: The outcome was documented in 206 patients. In the unadjusted analysis, chronic job strain was associated with recurrent CHD in the second period after 2.2 years of follow-up (hazard ratio [HR], 2.20; 95% CI, 1.32-3.66; respective event rates for patients exposed and unexposed to chronic job strain, 6.18 and 2.81 per 100 person-years). Chronic job strain remained an independent predictor of recurrent CHD in a multivariate model adjusted for 26 potentially confounding factors (HR, 2.00; 95% CI, 1.08-3.72). CONCLUSION: Chronic job strain after a first MI was associated with an increased risk of recurrent CHD.
PMID: 17925517 [PubMed – indexed for MEDLINE]
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仕事のストレスを job strain と表現している。
仕事のストレスは、精神的職務要求度と自由裁量度により、次の4区分、すなわち、
high strain(高要求度、低自由裁量度)、
active (高要求度、高自由裁量度)、
passive (低要求度、低自由裁量度)、
low strain(低要求度、高自由裁量度)、
以上の4群に分け評価した。
これがKarasekのJob Strain Modelで、精神科関係ではあまり使わない。
むしろ、身体疾患とストレスの関連を論じるときに用いられるようである。
high strain(高要求度、低自由裁量度)が一番よくないという、常識的な結論である。
うつ病からの復帰に際しては、
高自由裁量度では負担なので、むしろ、低自由裁量度、が望ましい。
そして、低要求度が望ましく、分類の中では、passive から開始するのがよい。
誤解を避けるために、
4群の下に、rehabilitation(軽作業、保護的低自由裁量度)を加えたらよいだろう。
high strain(高要求度、低自由裁量度)
active (高要求度、高自由裁量度)
passive (低要求度、低自由裁量度)
low strain(低要求度、高自由裁量度)
rehabilitation(軽作業、保護的低自由裁量度)
と分類して、仕事を準備しておいて、
下から順次、ステップアップしていけばよいと思う。