中絶前の相談、中絶後の相談も多いものですが、
次のような記事がありますので、紹介します。
日経メディカルより。
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全世界の年間中絶件数は4200万件
うち48%が危険な中絶
人工妊娠中絶の発生率に関する情報は、望まぬ妊娠を減らすため、そして、危険な中絶を減らすための対策の構築において極めて重要だ。米国Guttmacher研究所のGilda Sedgh氏らは、世界の各地域の人工妊娠中絶の件数を調べて1995年と比較した結果をLancet誌2007年10月13日号に報告した。
全世界が協力して2015年までに達成すべき8つの目標を掲げた「ミレニアム開発目標」の5番目が、「妊産婦の健康の改善」だ。妊産婦の死亡率を1990年の4分の1に減らすことを目指しているが、その達成に向けた監視においても、中絶率の把握は重要だ。しかし中絶は公になりにくい側面を持つため、データソースは限られており、正確な情報を入手することは難しい。著者らは、世界的な中絶率とその傾向をより正確に分析しようと試みた。
2003年の世界的、地域的な中絶の発生率は、公式な国別報告システム、国民を代表する集団を対象とする調査、病院の医療記録、論文発表された研究などから抽出したデータを基に推計した。また危険な中絶は、術者の技術が未熟、または、環境が最低限の基準を満たしていない(中絶は非合法といったの要因も含まれる)場合とした。
解析の結果、2003年には全世界で4200万件の中絶が行われたと推計され、95年の4600万件よりも少なかった。15~44歳の女性1000人当たりにすると、2003年には年間29件で、1995年の35件より少なかった。
2003年の1000人当たりの中絶率を地域別で見ると、アフリカ29件、アジア29件、欧州28件、南米とカリブ海沿岸地域31件で、ほぼ同様だった。北米は21件、オセアニアは17件と少なかった。
中絶率が最も低かったのは西欧で、1000人当たり12件。北欧は17件、南欧では18件。これらの地域は中絶が合法化されており、発生率は低いまま維持されていた。反対に最も高かったのは東欧の44件だった。ただし東欧は、95年の90件から急激に減少した。
全世界の5分の1に相当する860万件の中絶が行われた中国では、20%超も減少した。
2003年の時点で、全体の48%が危険な中絶だった。先進国では92%が安全な中絶であるのに、途上国では全体の55%が危険な中絶で、すべての危険な中絶の97%超が発展途上国で行われていた。危険な中絶が最も多かったのはアフリカ(98%が危険な中絶)で、2番目が南米とカリブ海沿岸諸国(94%)だった。アジアは34%だった。
危険な中絶が途上国に集中していることから、避妊技術の幅広い利用を可能にし、すべての中絶が安全に行われるようにする世界的な努力の継続が必要だ。
原題は「Induced abortion: estimated rates and trends worldwide」、概要はこちらで閲覧できる。
(大西 淳子=医学ジャーナリスト)
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日本での状況はまた別であるが、いろいろと考えさせられる。
母体にとって危険な中絶を安全なものにしていこうという趣旨は当然賛成である。
具体的な数字がLancet誌に掲載されたことに意味があるだろう。
日本では、お金を出せば、安全である。
お金が用意できなければ、危険なこともしているらしい。
医療機関で処置するには男性の同意が必要で、どんな男性が同意しているのか、
問題な部分もある。
たとえば、既婚女性の場合は、法律上の夫の同意が必要とのことだった。
何しろ、結婚している限り、妊娠した場合には、夫の子供だと推定するという法律の国である。
夫の他に恋人がいて、妊娠したから離婚して、出産しても、
その子は自動的に夫の子供と推定される。
しかしそれは実態にそぐわないので、何日にするとか、議論があった。
無責任な男性の子供の場合、親切な別の男性がついて行って、同意書にサインする場合もあるらしい。
そんなこんなで、心理的にも、深い傷になる場合がある。
場合があるというより、多くは深く傷つくと言った方がいいだろう。
中絶前の悩みは深い。
中絶後の悩みも深い。
普段は気にしていないような、人間のこころの奥底の価値観があぶり出されるような、そんな場面である。
キリスト教保守派の主張する、中絶禁止も、一理あると思ってしまうのである。
当然、中絶禁止反対派の言う、「かえってよくないことが多いのだ」ということも実際そうであって、中絶禁止反対派にも一理ある。
難しい世の中である。