緩和医療 スピリッチャル・ペイン

「緩和医療」とは死の直前だけの話であると、未だに誤った認識を抱いている医師は少なくない。だが、「がん対策基本法」において、抗腫瘍治療の早期の段階から緩和医療の遂行が重点課題として挙げられているように、緩和医療を理解し実践することの必要性は確実に高まっている。

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治療の早期から、QOLを保持するために、緩和医療を積極的に進めることが提唱されている。

身体的苦痛、
精神的苦痛、
社会的苦痛などと分類して、注意する。

倦怠感、抑うつ、せん妄(意識レベルの低下)などに対して、
精神的苦痛を癒すことができるように、精神療法と薬剤で対処する。

スピリッチャル・ペインと呼ばれる次元の苦痛もあり、
それは例えば、「自己消滅への不安」「人生の意味・目的の喪失」など、
人間として根源的な苦悩の部分もある。

自分が死に直面したとき、親しい人が死に直面したとき、
老化に伴う喪失の感覚など、
深刻に悩むもので、実際、慰めようもないようなものである。

人間の尊厳を保つこと、
過度の依存性を避けること、
独立性を維持することなどが大切である。

尊厳死や安楽死の問題にもつながるもので、
スピリッチャルな次元の問題で、
宗教者や哲学者、芸術家が関与する場合もある。

傾聴と共感がここでも大切であるが、
多くの治療者は、たぶん、年長者の、この世界から消え行く不安感には、
対処できないだろう。
むしろ、そばで付き添ってあげる感覚だろう。
その程度しかできないが、それでも、大切である。

深い信仰さえ揺れる。
それがスピリッチャル・ペインである。

社会的苦痛としては、経済的苦痛、対人関係の苦痛などがあり、
精神的苦痛と重なるものであるが、
考え方や受け止め方を変えるだけではなく、
実際の社会的な対処が必要な部分である。
例えば、医療費の補助制度を有効に活用する、
親族や愛する人たちとの関係の変化に実際的に対応するなどの対処ができる。