1回のチャレンジで禁煙に成功するのは意外と難しいことです。真剣に禁煙を考えてから7~10年、平均3~4回のチャレンジを経て生涯禁煙者になることが報告されています。禁煙はよく登山に例えられます。イギリスの版画家であったウィンパーはマッターホルンの頭頂に執念を燃やし、7回の試登の後、8回目で登頂に成功しました。今までは禁煙準備だと思って、もう一度禁煙にチャレンジしてみましょう。
喫煙は、動脈硬化の独立した危険因子であり、内臓脂肪症候群に喫煙の因子が加わると、脳卒中や虚血性心疾患のリスクが相乗的(個々に得られる結果以上)に上昇することが報告されています。そのため特定健診では、特定保健指導対象者細分化の指標として、「喫煙歴の有無」が導入されています。判断基準は国民健康・栄養調査(平成16年度)の問診項目に準拠した内容が採用され、「標準的な質問票」の「8」に示されている内容となっています。
8 | 現在、たばこを習慣的に吸っている。 (※「現在、習慣的に喫煙している者」とは、「合計100本以上、又は6ヶ月以上吸っている者」であり、最近1ヶ月間も吸っている者) |
(1)はい (2)いいえ |
指導では、必ず本人の禁煙に対する意識を確認した上で、関心のない人には情報提供にとどめ、関心がある・禁煙したいと思う人に禁煙を支援します。実際の禁煙につながるポイントは、喫煙が健康に及ぼす影響および禁煙にあたっての留意点を伝えることです。
参考:『保健指導における学習教材集 D 行動変容 ~何をどうすれば改善できるか~ たばこ』
http://www.niph.go.jp/soshiki/jinzai/koroshoshiryo/kyozai/data/d_32.ppt
http://www.niph.go.jp/soshiki/jinzai/koroshoshiryo/kyozai/data/d_33.ppt
より効果的な禁煙支援を行うためには、厚生労働省において最新の科学的知見を踏まえて策定された「禁煙支援マニュアル」を活用します。
その中でも示されているように、禁煙を阻む要因には「ニコチン依存」と「心理・行動的依存」の2種類があり、支援に当たっては、これらの依存状態の程度を評価し(ニコチン依存症のスクリーニングテスト「TDS」)、状態に合った支援を行うことが禁煙の達成につながります。
また禁煙は一朝一夕にできるものではなく、練習や経験が必要であること、プロセスが必要であることも報告されています。
そうした情報を伝えながら、禁煙を山にたとえて、対象者が登ろうとする山を確認してもらい登山方法(禁煙方法)を選択してもらうアプローチが重要です。