過剰な恐怖防ぐ仕組み解明 群馬大がマウス実験で

過剰な恐怖防ぐ仕組み解明 群馬大がマウス実験で 
 
記事:共同通信社 提供:共同通信社 【2008年6月18日】

 恐怖を感じるような体験をした際、脳内の特定のタンパク質が、過剰な恐怖記憶を作らないよう「ブレーキ役」として働いていることを、群馬大の児島伸彦(こじま・のぶひこ)講師(神経薬理学)らのグループがマウスの実験で突き止め、18日付の米専門誌に発表した。

 過剰な恐怖記憶は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の原因になるため、グループは、このタンパク質の研究を進めることで、PTSDなどの予防や治療に役立つ可能性があるとしている。

 タンパク質は「アイサー」と呼ばれ、遺伝子からタンパク質が合成される転写という段階にかかわることが知られている。

 グループは、遺伝子組み換え技術を使ってアイサーを持たないマウスと、アイサーが余分に働くように操作したマウスを作製。両方のマウスに、ブザー音を聞かせながら電気ショックを与える恐怖体験をさせた後、しばらくしてから再びブザーを聞かせ、恐怖感で身をすくませる時間の長さを比較した。

 すると、アイサー欠損マウスはアイサーが余分なマウスに比べ、すくんだ時間が4倍余り長かった。グループによると、恐怖が記憶として残る際、ある種のタンパク質が脳内で合成されることが分かっており、アイサーはその合成を抑制する働きがあると考えられるという。

 児島講師は「アイサーの機能をより詳しく解明するため、さらに研究したい」と話している。

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恐怖記憶に「ブレーキ役」 群馬大チームが特定、PTSD治療へ応用期待 
 
記事:毎日新聞社 提供:毎日新聞社 【2008年6月18日】

たんぱく質:恐怖記憶に「ブレーキ役」 群馬大チームが特定、PTSD治療へ応用期待

 動物が過去の体験を「恐怖記憶」として形成するのにブレーキをかけるたんぱく質を、児島伸彦群馬大講師の研究チームがマウス実験で突き止めた。過剰な恐怖記憶が原因とみられる心的外傷後ストレス障害(PTSD)の研究や治療に役立つ可能性がある。米神経科学誌に掲載される。

 研究チームは、神経細胞の興奮状態が過剰な恐怖記憶を作ると考え、興奮時に作られるたんぱく質「ICER(アイサー)」に注目した。

 そこで、遺伝子操作でアイサーを作らないマウスを作り、電気ショックと同時にブザー音を聞かせた。翌日ブザー音だけを聞かせると、このマウスは体をすくめたが、その時間は通常のマウスに比べて2倍も長いことが分かった。逆に、アイサーを過剰に作るマウスでは、すくんでいる時間が通常マウスの半分以下だった。

 一方、砂糖水を与える「楽しい記憶」の実験では、3種類のマウスの行動に大きな差はなく、アイサーが恐怖記憶の「ブレーキ役」になっていることが裏付けられた。

 記憶形成の「アクセル役」のたんぱく質として「CREB(クレブ)」が知られているが、ブレーキ役は不明だった。児島講師は「2種類のたんぱく質のバランスを調節できれば、恐怖記憶の強さを変えられるかもしれない」と話す。