「始末書を書け!」と言ってくるときには、何か魂胆がある場合があることをよく理解しておきましょう。
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仮に、あなたが起こした問題と同等のことをした人が社内にいて、そのとき、始末書を書いているならば、あなたも潔く書いて、素直にお詫びをするべきでしょう。過去に誰もいないような大きな問題であるならば、より一層、必要でしょう。このときは、上司の言っていることは、正論だと思います。
ここで、注意!いきなりパソコンに向かい、「ビジネス文書事例」の本を取り出して、それを写したり、ネット上に無数に散乱している始末書をダウンロードするのは、早すぎます。
きっと、あなたが起こしたトラブルの対応に、上司は困っているはずです。まずは、上司のもとへ行き、始末書に何を書くべきかを話し合いましょう。部内だけではなく、それを人事部や役員会などに提出する必要があるときは、なおさらです。
上司は、なんとか自分の身を守りたいと思っているはずです。あなたのことを守ろうと考える人は、相当少ない。心の中では、あなたのことを「こいつ、使えねぇー」と思っているでしょう。
だからこそ、上司の求めているものをあぶり出し、極力、それを始末書に書くようにするのです。おそらく、次のようなことを書いてほしい、と願っていると思います。
- あなたが起こした問題を感情論抜きに、事実で書く
- 問題を起こした理由、背景
- それらに対して、いま、何を感じて、今後、どうしていくのか
ここで、デキル人とそうでない人の「差」がつきます。デキる人は、始末書の中に、きっとこう書き込むでしょう。
「日ごろから、〇〇課長(=上司)から〇〇については再三にわたり、注意するように丁寧に指導を受けていました。にも関わらず、〇〇との関係を悪化させてしまい……」
始めのセンテンスには、上司への“配慮”があります。これが加わることで、上司は、人事部に提出するときに、少しは“言い逃れ”ができるようになります。
このセンテンスがあると、人事部にこんなセリフが言えます。
「〇〇君には、いつもよく言い聞かせていたんですけど……。監督が不十分でした。申し訳ありません」
読者の中には、「そんなの関係ねぇー。成果を出していれば、それでいいんだ!」と、強気の態度を貫く人がいるかもしれません。
そんな甘えた、ゆがんだプロ意識では、早いうちに潰されるでしょう。よその会社に行っても、お荷物。独立しても、あっという間に廃業。また、会社に戻るものの、そこでも厄介もの扱い。
それで定年を迎え、ひっそりと老後を送り、世間をねたんだまま、死んでいく……。そんな人生がうっすらと見えてきます。
あなたは、問題を引き起こしてしまったのですから、せめて、上司が動きやすい環境を作り、彼には思う存分、言い逃れをしてもらえばそれでいいのです。どれだけ逃げても、管理職である以上、完全には逃げられないのですから……。
だからこそ、始末書の中に、上司への“配慮”を盛り込みましょう。そして、心からお詫びをするべきでしょう。こうして、上司を巧くコントロールするのです。
ピンチはチャンス!日ごろ、上司とのコミュ二ケーションが浅かったかもしれませんが、始末書を書くための「ミーティング」で、深い関係が作れるかもしれません。じっくりと話してみると、嫌な上司も意外と、「いい奴」かもしれませんよ。
上司を巧く動かす力は、ほかの部署に異動しても、後輩や部下をもっても、そして取引先との関係作りにも大いに生かすことができます。
独立したり、定年後に第2の人生を歩むときにも……そして、家族間の関係にも……。飲み屋のマスターやママと接するときにだって、応用可能。
始末書を(楽しく)書きながら、こんな力を養いましょう。これもたまた、職場サバイバル!