混合診療解禁反対の話の中で、
コラーゲンなどに高いお金を出す人もいるのだから、
なんていうことを書いて、
コラーゲンを食べている人を批判したような形になったが、
その説明。
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まずコラーゲンの構造 Wikipedia でお勉強。
コラーゲン蛋白質のペプチド鎖を構成するアミノ酸は、”―(グリシン)―(アミノ酸X)―(アミノ酸Y)―” と、グリシンが3残基ごとに繰り返す一次構造を有する。この配列は、コラーゲン様配列と呼ばれ、コラーゲン蛋白質の特徴である。例えば、I型コラーゲンでは、この “―(グリシン)―(アミノ酸X)―(アミノ酸Y)―” が1014アミノ酸残基繰返す配列を持っている。(アミノ酸X) としてプロリン、(アミノ酸Y) として、4(R)ヒドロキシプロリン(プロリンが酵素によって修飾されたもの)が多く存在する。この1本のペプチド鎖はα鎖と呼ばれ、分子量は10万程度である。
多くの型のコラーゲンでは、このペプチド鎖が3本集まり、縄をなうようにお互いに巻きついて、らせん構造を形成する。これがコラーゲンの構成単位であり、トロポコラーゲンと呼ばれる。トロポコラーゲンを作る際、1本1本のペプチド鎖は、左巻きのポリプロリンII型様の二次構造をとり、3本のペプチド鎖は、お互いに1残基分ずつずれて、グリシンが中央に来るようなゆるい右巻きのらせん構造を形成する。I型コラーゲンの場合、その長さはおよそ300nm、太さは1.5 nmほどである。
このトロポコラーゲンが、少しずつずれてたくさん集まり、より太く長い線維を作る場合があり、これはコラーゲン細線維 (collagen fibril) と呼ばれる。例えば、骨や軟骨の中のコラーゲンは、このコラーゲン細線維をつくっており、骨基質、軟骨基質にびっしりと詰まっている。コラーゲン細線維は透過型電子顕微鏡で観察することができる。コラーゲン細線維には、ほぼ65 nm周期の縞模様が観察される。コラーゲン細線維の太さは通常、数十~百数十 nm程度である。この太さは、そのコラーゲン細線維を作っているコラ-ゲンの各型の割合などによって決まることがわかっている。
コラーゲン細線維は、更に多くが寄り集まって、結合組織内で強大な線維を形成する場合がある。これがコラーゲン線維(膠原線維;こうげんせんい、collagen fiber)である。コラーゲン線維の太さは数μm~数十μm程度で、適切な染色をおこなうと、光学顕微鏡でも観察することができる。コラーゲン線維は皮膚の真皮や腱などにはびっしりとつまっている。
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顕微鏡で覗いて、スケッチを描かされます。大学には染色標本作成の名人がいます。
まあ、要点は、コラーゲンは、たんぱく質だということだ。とすれば、アミノ酸に分解されるわけで、その内容は?
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アミノ酸組成
コラーゲンのアミノ酸組成はグリシンが約半分を占め、プロリン及びヒドロキシプロリンが21%、アラニンが11%とかなり偏った構成となっている。またコラーゲンに特有のアミノ酸としてヒドロキシプロリン・ヒドロキシリジンなどがある。これらは通常のプロリン・リジンに対して水酸基が1つ付加した構造のアミノ酸で、他のタンパク中にはほとんど含まれない。これらは水素結合によってタンパク鎖同士を結び、3重らせん構造を保つ働きがある。
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まあ、そういうことです。
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機能
コラーゲンは、様々な結合組織に、力学的な強度を与えるのに役立っている。若干の弾力性もある。特に、腱の主成分は上述のコラーゲン線維がきちんとすきまなく配列したもので非常に強い力に耐える。腱には、筋肉が発生した引っ張り力を骨などに伝え、運動を起こす際に非常に強い力がかかる。また、骨や軟骨の内部では、びっしりと詰め込まれたコラーゲン細線維が、骨や軟骨の弾力性を増すのに役立っており、衝撃で骨折などが起こることから守っている。また、皮膚の弾力性や強度に役立っている、などである。
一方、こうした従来から知られている機能とは別に、コラーゲンが、それに接する細胞に対して、増殖、分化シグナルを与える、情報伝達の働きも担っていることがわかってきている。
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学生の頃は、エラスティク・ファイバーという名前のものを習いました。コラーゲン・ファイバーは固い成分、エラスティック・ファイバーは、伸縮性に富む成分で、皮膚繊維の中でのこの比率が、皮膚の伸縮性や弾力を決定していると、山田英知先生が美しいスライドを提示しながら解説したように思います。最近は包括して、コラーゲンファイバーと呼んでいるのかな。
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種類と分布
2004年までに、ヒトのコラーゲン蛋白質は30種類以上あることが報告されている。
I型、II型のようにローマ数字を使って区別される。例えば、真皮、靱帯、腱、骨などではI型コラーゲンが、関節軟骨ではII型コラーゲンが主成分である。また、すべての上皮組織の裏打ち構造である基底膜にはIV型コラーゲンが主に含まれている。体内で最も豊富に存在しているのはI型コラーゲンである。
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なるほど、それで、エラスティック・ファイバーという言い方はしないようになったわけだ。もっと精密に言うようになった。
でも、大雑把にいうと、エラスティック成分が失われるから、歳をとると、皮膚を指でつまんだら、そのまま皮膚が立っている、なんていうことが起こる。
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健康食品としての意義
コラーゲンを多く含む健康食品が、皮膚の張りを保つ、関節の痛みを改善するなどと宣伝されていることがある。一部の症状に有効性が認められたという論文は多いが、相反する結果を示す論文も報告されており、その有効性について科学的に十分に証明されているとは言い難い。
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それはそうだ。だって、食べたたんぱく質は、アミノ酸単体か、二つつながったくらいまで分解される。もとがコラーゲンか何かなんて分からなくなっている。
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コラーゲンはタンパク質の一種だが、アミノ酸まで分解されなくとも小さなペプチド(分子量500-15,000)まで分解されれば消化管から体内にとりこまれる。しかし、取り込まれたコラーゲンペプチドは皮膚、肝臓、腎臓、脾臓、筋肉、軟骨など全身に分配され、必ずしも目的の部位にだけ届くわけではない。そもそもタンパク質をはじめとした栄養を含む食品類をバランスよく摂っていれば摂取量が不足することはないので、健康食品で補う意義は乏しいと考えられる。
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そうですね。当然です。高校の生物で習いました。
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コラーゲンを単なるタンパク質供給源としてみた場合、グリシンを非常に多く含む反面、必須アミノ酸のひとつであるトリプトファンをまったく含まないなど、アミノ酸組成が著しく偏っており、アミノ酸スコアの観点から考えてもそれ単体での栄養学的価値は低い。
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そういうことです。
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なお、コラーゲンを配合した化粧品が数多く販売されているが、コラーゲンは主に保湿剤の目的で使用されている。
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直接皮膚に塗るなら、コラーゲンのままです。でも、それが自分の皮膚に吸収されるわけでもないのです。実際は、ワセリンを塗ったのと変わりないと、皮膚科の先生は言っています。
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とんこつラーメン屋でコラーゲンが入っていると書いてある店があるが、動物性コラーゲンの分解温度は40度であるため、とんこつを出すような煮方をした場合には分解されてしまい、栄養成分としての価値はまるでない。
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つまり、成分であるアミノ酸になっているということです。旨みにはなるはず。
コラーゲンたっぷりの食事を続けたら、膝関節が楽になったという証言は、どうなるのでしょう。
わたしはこのような分野については、「類感呪術」という用語で説明しています。
ふたたびWikipedia から
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類感呪術 (るいかんじゅじゅつ) は、文化人類学者のジェームズ・フレイザーが定義した、民俗学における呪術の性質を表す言葉である。類似したもの同士は互いに影響しあうという発想(「類似の法則」)に則った呪術で、広くさまざまな文化圏で類感呪術の応用が見られる。
フレイザーによると、呪術の要素は、この類感呪術と感染呪術の二つに分類できるとされる。
類感呪術の例
「海草を食べると髪が黒くなる」という迷信。
実際に海草に髪の色を決定するメラニン色素を増やすような化学物質は含まれていないのだが、海から引き上げられた海草が髪の毛のように見えることからこのような誤解が生まれた。
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これは人間の古層の思考類型の一つであり、たとえば、中国の古典、「詩経」に収められている詩を読解するときに役立った。
そのように古い思考形式が現在もなお生きていて、高校の生物で習ったことなど全く無視させる強い力を発揮していることに、驚くのである。
そして、そのような人たちが、限られた情報をもとに投票したり世論調査に答えたり、そして世の中が回っていくのかと思うと、かなりのめまいを感じるのだ。
合理的判断ができない集団に、操作した情報を与え、一体何をしているのか、何をしたいのか。コラーゲンを売っている人、買っている人だけがどうというのではなく、まったくユビキタスな現象なのだ。